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笑って

第2章 背負うもの


「んーっ.......今日も良い天気だなぁ」


家の外に出た私は、大きく伸びをした。


「おはよう、美夜。ただいま」


聞こえた声に、あくびを噛み殺しながら、
目をこすりつつ振り返る。

目を向けると、双子の兄である朝陽が笑顔で立っていた。


「おはよう朝陽~....あ、そっか見回り?」

「ん。どこも綻びはなかった」

「変わりなく?」

「変わりなく」


笑みを浮かべ、といっても他人から見たら、
朝陽は多分無表情に見えるだろう。

私だからこそ分かる朝陽の表情。

もう慣れたから困らないけど、たまには朝陽の
思いっきり笑う顔が見たい。


「美夜、そんな格好で外出ちゃだめだって」


寝たときに着ていたシワだらけの小袖を
指さされ、私は首をすくめた。


「良いじゃない、誰もいないんだし」


実際、この島に私と朝陽以外の人間はいない。
こんな、呪われた島に送り込まれるのは
私達みたいな人間だけだ。


「巫女が何言ってるんだよ。自覚が足りないんじゃない?」

「それは言わないでよ~」


暗い考えを吹き飛ばすように
軽い言い合いをしながら、家へ入る。
朝陽が、袴の袖をめくって台所に立った。


「俺が料理するから、美夜は着替えてきていいよ。
 今日は体調どう?」

「ありがとう。万全だよ、今日はたくさん祓えると思う」

「そう。無理しないでね」


朝陽の柔らかい声に笑みを返し、
私は自分の部屋に入って着替えた。

長い黒髪を頭の上で一つに束ね、
お気に入りのかんざしを挿して戻る。

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