• テキストサイズ

Dye D?

第4章 ロザリオ


私の通された部屋は、ホテルの一番 奥だった。
高級感のある家具にドキドキしながら、ソファーに腰掛け溜め息をついた。

「これから、どうなるんだろ。私、帰れるのかなぁ...」

不安が襲いかかって来た時に、部屋にノックの音がした。
ドアが静かに開き、背の高い落ち着いた感じの男性が入ってきた。


大倉「お客様、ご夕食の支度が整いました」

低く静かな声に、私の胸の奥は突然熱くなり、顔が赤くなっているのが分かった。
気持ちを制御出来ない私を、大倉は見つめ待っていた。

「あ、ありがとうございます...」

私は急いでソファーを立ち上がると、外に向かおうとした瞬間に足下の荷物に引っ掛かり、転けそうになった。

大倉「危ない」

大倉は、ふわぁと空気のように私の側に走って来ると、しっかりと支えた。

「す、すいません」

支えられて掴んだ人の身体は、氷のように冷たかった。
それを感じた瞬間に、大倉はさっと私の側から離れた。


大倉「ご夕食の場までご案内致します、くれぐれも足元にお気をつけて」

大倉は何事もなかったように微笑みながら、
ゲストを案内した。


私は、薄暗い長い廊下で
二人きりでいる事に緊張していた。
自分の心臓の動きがわかるぐらいに。
私はこの従業員に特別の感情を持ってしまったのかも知れない。
その私の気持ちを知らないで、大倉は突然話し掛けた。

大倉「綺麗な首ですね」


「えっ、」

大倉「いえ、失礼しました」

その瞬間に緊張が溶け、私は笑ってしまった。
褒められた嬉しさで私は

「首を褒められたのは初めてです、このロザリオを褒めて頂いた事はありますが」

私は首にかけていたロザリオをそっと服から出すと大倉に見せた。

大倉「……っ!」

大倉は一瞬目を見開き、ロザリオから目を逸らしたが、何事もなかったかのように微笑んで、ゆっくり歩き出した。

大倉「素敵ですね」

背中を向けながら私に言った。

「私の家は代々クリスチャンなんで、これは家系で受け継がれてるんです」

私は、彼と話すのが嬉しくて、話し続けたけれど
彼は背中を向け続けていたので

「あっ、すいません勝手にベラベラと」

急に我に帰り恥ずかしそうに、ロザリオを胸にしまった。
その瞬間、大倉はゆっくり振り向き、
着いた先の扉を開けながら

「いえいえ、着きましたよ」

笑顔で中に誘導した。
/ 56ページ  
スマホ、携帯も対応しています
当サイトの夢小説は、お手元のスマートフォンや携帯電話でも読むことが可能です。
アドレスはそのまま

http://dream-novel.jp

スマホ、携帯も対応しています!QRコード

©dream-novel.jp