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Dye D?

第23章 正体


安田に部屋に連れて行かれた大倉は、
ベッドに寝かされていた。

大倉「止め……」

朦朧とする意識の中で、大倉は叫んだ。

安田「大丈夫か?」

心配そうに、安田は大倉の側についた。

大倉「あの娘を、無傷で帰してやりたい……」

大倉は苦しそうに起き上がった。

安田「大倉...」

安田は悲しそうに大倉を見つめた。

大倉「もう、僕のために誰かを犠牲にしたくない..」

ふらふらになりながら、ベッドから立ち上がる

安田「駄目だよ、寝てなきゃ...」

大倉「大丈夫、大丈夫、
早く彼女を迎えに行かないと...」

大倉は、必死だった。
そんな大倉を見て、
安田は言葉を発することが出来ず、立ち尽くした。

大倉はフラフラになりながら、廊下に出た。

横山が、大倉の部屋の前に私を連れて来ていた。

大倉「...な、なんで...」

大倉は、大きく動揺した。
安田も、慌てて飛び出して来た。

私は静かに一人、大倉のもとへ歩みを進めた。
彼が明らかに弱っているのが私にもわかった。
そんな彼を見るのがつらかった。
どんな事をしても助けたいと思った。

「....教えてもらったの...。
私なら大丈夫だから...ここから血を吸って...」

服の袖を上げ、
苦しんでいる彼の前に腕を差し出した。

横山「俺の考えが正しければ、
彼女は吸血鬼にはならない。」

横山は告げた。

大倉「横山くん、
たとえそうだとしても、
僕は彼女に牙を立てるなんてこと、出来ない...」

大倉は、ハッキリとした口調で告げた。

横山「……」

横山は静かに大倉を見つめた。

大倉「彼女には、
僕たちの望みを持ち帰ってもらいたい…」

大倉は優しく微笑み、
震える指で側にいる私の頬を撫でた。

横山「…………………」

横山は目を伏せた。

「...腕から吸って」

私は、震える声で言った。このままでは、彼は消えてしまう、それは私が見ても分かるほど弱っていた。

大倉「.......出来ない」

大倉は辛そうな声で答えた。

「.....私は、貴方を救いたいの」

その瞬間、大倉がぐらりと倒れた。

安田「大倉ぁ!」

安田が心配して駆け寄る。

大倉「……………」


大倉は、焦点の合わない目で天井を見つめる


横山「………………」


恐ろしい程の沈黙だけが
空間を包んだ。
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