第7章 恋人同士の日常 ~柳 蓮二 編~
緻密な【計算】を軽くかわしては、【計算通り】にいかない目が離せない恋人が俺にはいる。
交際歴は早くも1年ほど。理屈が通じない恋人は、明るく平等でとても信頼できて好ましい存在。
しっかり者のアイツは、いつでも人の中心にいる。少々、妬けてしまう時があるのだが…。
そんな時に決まって……ほら、今日も…。俺の機嫌を伺いにくるのだ。
藤堂『蓮二さん。』
柳『何だ。』
藤堂『フフ…。』
柳『何が可笑しい?』
藤堂『可笑しくなんかないです。たまに、蓮二さんが物思いに更けている横顔……素敵だなぁって。』
知ってか知らずか……コイツは、簡単に俺の心を掴む。
柳『全く、お前には敵いそうにないな。俺も精進せねば。』
藤堂『ダメです。今以上に素敵になったら、私なんて益々、不釣り合いになるじゃないですか。今のままで居てください。』
頬を膨らませては、恨めしそうな目を俺に向ける。その上目遣いが【秘策】……この目に弱いんだ。
やはり、敵いそうにないな…。
彼女の肩を抱き引き寄せる。その瞬間、お前は大人しくなる。
耳まで赤い彼女を横目に見つつ、【嫉妬】と言う二文字に蓋をする。
藤堂『蓮二さん?』
柳『ん?何だ。』
藤堂『香って、呼んで下さい。』
そう呼ぶのは、異性では俺以外には存在しない。その言葉を口にするときは、少しだけ憂いを帯びた目をする。
お前も不安な気持ちを持っていると俺に伝えたいのか…。
柳『香……俺の心に存在するのはお前だけだ。それ以外必要としない。だから…案ずるな。』
顔を寄せては、香の額にキスをする。いつも、こうやってお互いの気持ちを再確認している気がする。
きっと、この先も俺たちはこうして……お互いを必要としていくのだろう。
柳『香……可愛いな、お前は。』