第6章 恋人同士の日常 ~白石 蔵ノ介 編~
初対面の印象はお互いが最悪。けど、【縁】があったんやろなぁ。今では誰よりも俺の理解者や。
メンバー等にさえ言えへん弱音かて、躊躇なく口に出来る。ま、アイツが口が固うて正義感の塊で……お節介ヤキやからかもしれへん。
今かて……疲れた身体も心も癒してもろうてる最中や。
藤堂『蔵ノ介さん……どうかしたの?』
膝枕中で、その膝の上で口元を緩めてたら誰かて怪訝に思うやろなぁ。
白石『今、幸せを噛み締めてたとこや。』
彼女は変な表情もせんと、小さく笑って俺の髪を撫でた。
藤堂『…少し眠ったらどうですか?』
白石『おおきに。そうさせてもらうわ。』
差し伸べた指先は彼女の頬に触れた。ここに存在していることを確かめる為に…。
くすぐったそうに目を細めては、キュッと俺の指を掴む。ここに存在していることを、理解させてくれるかのように。
白石『静やなぁ……。』
意識が遠退く中、彼女の声が聞こえた気がした。
藤堂『あの時は………に。』
きっと、俺と同じ初対面のことを思い出していたんだろう。
白石『……ん?』
目が覚めてみれば……自宅のベッドの上。
白石『夢……見てたんか。けど……ええ夢やったわ。ほんま……香のこと、益々、逃がすわけにはいかへん。』
昨日まで疲れきっていた思考力が回復している辺り、彼女の夢を見たからかもしれへん。
白石『初対面の印象…最悪やったのに、分からへんもんやなぁ。』
さ、今日はデートや。きっと、夢の中のような穏やかな時間が過ごせるかと思うたら……自然と口元が緩む。
待ち合わせより早めに出て、俺の姿を見付けて駆け寄ってくる香の【無敵の笑顔】を堪能させてもらうとするか。
白石『ホラ、噂してたら……。って、アイツ躓きよった!』
慌てて走り寄った俺の腕の中に、吸い寄せられるかのように彼女の体が収まった。
白石『ナイスキャッチや。ついでやから…。』
抱き締めたまま香の柔らかい髪に顔を埋める。固まったままやけど、助けたご褒美ってことで…。
なぁ?ほんま…人の【縁】って分からへんもんやなぁ。今、こうやって香が腕の中に居てくれる……それだけで、メッチャ幸せや。