第7章 【照島 遊児】お前がいないと楽しくない
「ひろか・・さっきの返事、ホワイトデーに聞かせてくんね?」
「えっ。・・うん」
ひろかは頷いた後に、寒いのかブルっと身体を震わせた。
俺はさっきひろかからもらったマフラーを外してひろかの首に巻いた。
「遊児が寒いじゃん。私は大丈夫だから!」
「・・俺も大丈夫」
俺はゆっくりとひろかを抱きしめた。
「こうしてれば暖かい。・・ひろか、やっぱり今返事聞いていい?」
俺は更にひろかを強く抱きしめた。
返事を聞くのが怖くないと言ったらウソになる。
けど、今俺が感じているひろかの体温がすごく心地よくて、このまま離したくないと思った。
「ひろか・・」
俺はひろかの頬を両手で包み込み、グッと顔を上げた。
「遊児・・手、冷え切ってる」
「ごめん。冷たい?」
「ううん。平気・・」
ひろかは俺の手のひらに自分の手を重ね合わせた。
ひろかの手はとても暖かくて、ジンジンと痛んでいた俺の手はひろかの頬と手のひらで温められていく。
「ひろか・・好きだ」
「・・私も、好きだよ。遊児・・」
俺の手の中でゆっくりと目を閉じたひろかにそっと唇を・・・
「ちょーーーと待った!!ひろか、ご近所さんに何言われるか分からないから、早くこっちに来なさい」
「おっ、お兄ちゃん!!」
ひろかはあっけなく、お兄さんに連れ去らわれてしまった。
「ただの同級生くん!こういうことは謹んで頂きたい!!」
「・・すいませんでした!今後気を付けます!今日は失礼します!!」
俺はガバッと頭を下げてその場を去った。
お兄さんにはかなり嫌われてしまったけど、ひろかが俺をまだ好きだと言ってくれたことが嬉しくて、口元が緩んで仕方がない。
ピピピ
スマホが鳴って画面を開くとひろかからの連絡。
お兄ちゃんがごめんね。
月曜日、学校で。
ひろか
久しぶりに交わすひろかとの連絡。
俺はスマホを握りしめながらその日は眠った。