第2章 西谷夕
体育館に風通りは悪く、蒸し暑い。室内気温も30度を超えている。
そんな中、部員たちは汗水垂らしながら一生懸命練習していた。
疲れた彼らの為にドリンクを作ったりするのが私の役目だが、現在、ベンチに座ってぼんやりと練習を眺めていた。
今日は生理二日目。貧血気味で体がだるく、正直起きているだけで精一杯。
やる気が合ってもまともに動ける気がしないし、何より迷惑になりそう。
申し訳ないけど仕事は潔子に頼もっかな。
「潔子ー.....いっ!!」
名前を読んだ瞬間突然腹部に強い痛みが走る。耐えることが出来ない程の痛み。必死で温めても暑さが増すだけ。痛みが引く気配は一切ない。
唇を強く噛み締め耐えていると微かにこちらに近づいて来る足音。
きっとさっき呼んだ彼女だろう。
「」と声を掛けられ顔を上げてみれば近くに潔子の顔。
「潔……子」
「大丈夫……」
「ちょっと、辛いかな……」
苦笑いを浮かべると、潔子は隣に座ってお腹を撫でてくれる。自分でやるのとは違って、段々痛みが和らいでくる。
そんなことができる彼女を同い年だとは思えず、年上と感じてしまう。
落ち着いた頃に「部活早退する?」と聞かれたが皆が頑張ってるのに一人だけ抜けるのはどうかと思い、いいと断った。
「潔子さん、何かあったんですか!!」
こちらの様子に気づいたのか夕が走って向かってくる。場に到着すれば一瞬で顔色を変えた。
「!!大丈夫か!?」
「大丈夫、ちょっと体調悪いだけだから」
「んなわけ無いだろ、顔色悪いぞ!!」
「本当に大丈夫だから、ね?」
いつも元気で笑顔が素敵な夕とは違って今日はちょっと怖い。
そんなに顔色悪いかな。
別に大丈夫だと思うけど。
痛みを抑える為に腹部を強く抑えた。
するとまた夕の心配そうな顔が目に入る。
別に生理だから心配しなくて良いよ。って伝えてあげられたらな。
「西谷は練習に戻って、後は私に任せて」
「潔子さんが言うなら……分かりました!!」
夕は私の方を見て「あとでな!!」と言いいつもの笑顔でニカッと笑ってくれた。それだけで元気が出るよ。ありがと。
練習に戻っていく夕の背中を見ながら彼の彼女で要られることを只々有り難く感じていた。