第6章 【黒尾鉄朗】いない
「またね」
この言葉は他の奴等にとっては当たり前でも俺達には特別だった。
俺には昔、研磨同様仲の良い幼馴染が居た。
只々普通に一般的な可愛い女の子。
出会ったきっかけは単純で。
一人だったに声を掛けたこと。
最初は怖がられて目も合わせてくれなかったが話している内、次第に心を開いてくれた。
それからは毎日朝から夕方まで一緒に走り回って、はしゃいで。遊んで。
何もかも楽しくて毎日が充実していて
本当に凄く凄く幸せだった。
月日が経ち
同じ中学に行き同じ高校へと進んだ。
そこでも変わらず一緒にいた。
一緒に登校して。一緒に昼飯とって。一緒に勉強して。一緒に部活して。一緒に下校して。
一緒に居すぎて気持ち悪いくらい。
いないと不思議に感じるくらい。
仲が良かった。親友だった。
俺と研磨とと。いつまでもずっと仲良くやってけると思ってた。バカやって笑い合えると思ってた。例え大人になったとしても。
しかし、高3の春。
突然が死んだ。
死因は事故死。
信号無視をした自動車が突っ込んできたそうだ。
は突き飛ばされ即死。
病院に呼び出された時は新手のドッキリかなんかた思ったが違った。
個室に入ればには白い布が掛かっていて捲って確認すれば血の色が全くない真っ白い穏やかな顔。
「嘘……だろ」
彼女の頬にそっと触れてみる
冷たかった。もう、生きてないんだ。
そう思った瞬間酷い痛みに襲われた。
針で刺されたような鋭い心の痛み。
今まで一緒に生きてきた同然の親友が目の前で死んでいる。
あの日常は元には戻らない。
戻ってこねぇんだ。
もう、二度と顔も見れない。声も聞けない。笑い合えない。
なのに涙は出なかった。
哀しすぎて、辛過ぎて。
1粒も出てこなかった
あれから約8ヵ月
俺と研磨は元気にやってるぞ。
だから戻ってきてくれよ。
俺達の心の穴を埋めてくれ。
最後にお前から聞いた「またね」と言う言葉