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sky memory

第3章 記憶の断片、笑顔の破片 金城白子 現代(学生時代有)切


急にガランとした部屋に一人寂しくいる俺
この封筒を開けてしまえば何かが終わってしまう気がする
それが怖くてなかなか開けられずにいた
天火が言っていた琉璃が死んだと
信じられない、信じられない、信じられない
ひたすらそれを繰り返すだけ
けれど天火が嘘をつく奴ではないと分かっている

そうしたら急にどうすればいいのか分からなくなってしまった
誰かに会いたい?
そうじゃない
何か言いたい?
そうじゃない
喚きたい?
違う、違う
それじゃ、泣きたい?
涙なんて出てこない

本当にこの世にいて、こんなに目的がなくなったことはなくて戸惑っている
どうすればいい
俺は何をすればいい
こういう時、一体何をすればいいんだ
誰か教えてくれないか

そんな時に思い出した
君のおばあちゃんが亡くなった時の話
俺は丁度、お菓子屋でバイトをしていた
その時に君は親と一緒に入ってきて俺に会釈した
一体、何が起こったのかと思ったがやるべき仕事があるので奥に引っ込んだ
それから店の従業員さんに、その話を聞いた

俺が丁度、店に品物を並べている最中のこと
君はいつもの声で言っていた

「これ、おばあちゃんが好きだから買って行こう」

その時は何も思わなくて、ただ聞いていたが
後後、よく考えてみるとまだ君がおばあちゃんに笑顔でお帰りと言ってもらえると信じているのではないかと思った
彼女は、好きだったではなく、好きだからと答えた
誰しも大切な人がいなくなったら信じたくないもの

それから俺は線香をあげに行き、彼女に会った
そこには幸せそうな顔をした彼女のおばさん
彼女は作り笑顔をして、でもそれは大切な人に向ける幸せそうな笑顔で言った

「白子が来てくれたよ。おばあちゃん」

帰り際、君はかなり無理をしている顔をして
そんな様子に何か声を掛けたくて掛けたかったけど
自分の口から出てきたものは自分自身をも驚かせた

「泣きたい時は、泣けよ」

一体何を言ってるんだと正直、本当に驚いた
その後、君は泣き崩れてしまって、その後返してやれる言葉がなかった
返せない
戻してやることも出来ないんだから冗談でも大丈夫なんて言えなかった
思わず俺も一筋涙が零れていた

「ありがとうね。白子」

「何かあったら、言うんだよ」

そう言い残して俺は彼女の家を後にした
暗かった、外は暗くて何も見えなかった

今度は君?
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