第2章 踏んだ記憶はゴザイマセン
なにかを踏んだと思った瞬間に、足をどける。
視線を向けると、さっきまで足があった所に無残に砕け散った卵の殻の様なものと
…赤ちゃん?…
やばい!赤ちゃん踏んじゃった!え、でもバリッ?殻?
小さくパニックになりながらも、足元で伸びてる赤ちゃんを慌てて抱き上げる。
「ちょ、大丈夫?おーい」
と、頬を優しく叩くと少し眉間が動いた様な気がした。
よかった、生きてる。
もしかして、踏んで殺しちゃったのかも!という不安から解放され安堵し息を吐く。
赤ちゃんも顔色は真っ白…もとから白いのかもしれないが、白い以外は外傷はない。
綺麗な黒髪に目を惹かれながら、これからどうしようかと途方に暮れてると、遠くから走る様な音が聞こえてきた。
音が近づくに連れて、その音は馬の蹄の音だと分かった。それに「ハッ、急げ」やら人の声も聞こえた。
どうやら、此方に向かってきている様子なので通り過ぎる前に声をかけよう。んで赤ちゃんの為にも、あわよくばその人に病院まで連れて行ってもらおう。
半分は私が人のいる所に行きたい気持ちが大きいのがあるが、人命第一です。
近づいてきた馬の姿に人が乗っているのを確認し「すみませーん!」と声をかけようとしたが、その声は喉から出なかった。
だって
物凄い形相で、こっちに向かって走ってくるものだから。