第6章 苦手意識
梨沙
『……あ、のさ、真樹斗。』
女子達の視線を感じながら教室の前までやってきた私達。
だけど真樹斗は教室まで付いて来ると「3組か…」と呟いた後、「じゃあ、またね。梨沙姉、黒兄、先輩。」そう言って踵を返してきた道を戻って行った。
光紀「はぁ…アイツ、なんなの? 梨沙ちゃんの事「梨沙姉」って言ってたし、圭太の事だって…」
その事が余程気になったのか、眉間に皺を寄せたまま、光紀君が聞いてきた。
梨沙
『真樹斗は…強いて言えば、幼馴染…なのかな? 小さい頃、よく遊んだし。』
光紀
「幼馴染…ねぇー…」
そう呟くと、光紀君は、ちらっと圭太の事を見た。
吊られて私も圭太の事を見る。
圭太は頭をがしがしと掻きながらこう言い放った。
圭太
「……俺、やっぱりアイツ苦手だわ。」
そう言うと、圭太は教室に入って行った。光紀君も続いて入って行く。
梨沙
(やっぱり…にが、て…?)
圭太の言葉が胸の中で引っ掛かった。
梨沙
『やっぱりって…圭太、もしかして ずっと真樹斗の事が苦手だったの…?』
梨沙
(だけど、そんな事 今まで一度も…)
梨沙
『もしかして…私に気を使って?』
そう思ったら、何だか圭太に申し訳ないと思えてきた。
確かに小さい頃から私と圭太と真樹斗の三人は、毎日とまではいかないけど、遊ぶのが多かった。
けど、真樹斗はいつも遅くまで私達を引っ張り回していた紀がする。
前に圭太が空手の習い事があった時なんて…