第3章 いいよ。

彼は片手でクイッと私の顎を持ち上げる。

えっ…キスするの…？

いいけど…キスするの？

私はドキドキして彼の目を見つめる。

目を閉じるべき…？

すると、彼はもう片方の手の指で、そっと唇に触れる。

指で、軽くポンポンて。

「はぁ…しっとりというか、プルプルというか…なんとも言えない…。色も、形も、とても綺麗ですね…」

そう言いながら、私の下唇をツーっとなぞる。

何これ。

こんなの恥ずかしすぎて…

キスしたほうがまだ恥ずかしくないんじゃないの？ ってぐらい

恥ずかしいんですけど！

「あ…あ、あ、あのっ！」

声出そうとしたら、上手く声が出なくてちょっと大きい声が出ちゃった。

「ごめんなさいっ！ 調子にのりましたっ」

彼がビクッとして、手を引っ込めて謝る。

私は身体の奥から震えて、声も震えそうだけど、頑張って続きを話す。

「あの…違うの。私…村上くんのこと好き。だから、もっと…好きにしていいんだよ？
村上くん…何がしたい？ 私…なんでもしてあげる…」

思い切って言えたけど、恥ずかしくて顔を上げられない。

私は膝の上に乗せた手をギュッと握る。

「田中さん」

彼が私の膝の上の手に、自分の手を重ねる。

私はそっと顔を上げて、彼の顔を見る。

「僕も…僕も田中さんのことが好きです。大好きです。
いいんですか？ 僕は…僕と…」

彼の顔が赤い。私も多分赤い。

キス…？

それともこの真剣な感じは sex…？

いいよ。私、村上くんにならなんでも…。



「僕と結婚してくださいっ！」

「はいっ」

…

高2の秋、私は婚約しました。


fin