第10章 広がる出会い
「いらっしゃい、待ってたよ」
「お邪魔します・・・琇、くん」
ギリギリまで面倒を見て貰ったテストを終えた今日、私は昨日も来ていた笹倉家へお邪魔していた。最近、何かある毎にこうして招いてくれる琇。
「うーん、やっぱり呼び捨てじゃないかー」
昨日もテスト勉強を見て貰っていた琇に面倒をかけたお礼をしたいと申し出たところ・・・もっとフランクに呼んで欲しいという、私にとってはなかなかハードルの高い要望で。
「でも、一応約束は守ったよ・・・?」
「しょうがない、呼び捨ては気長に待つよ。あ、それか、お兄ちゃんでも・・・」
「兄貴、キモい」
「あれ、いたの?功」
「・・・・・・」
顔を引きつらせて完全に引いているのは、琇と同じく昨日まで勉強を見てくれていた功平。彼にもお礼を・・・と聞いてみたが、考えとく、とのこと。
私より1日早くテストが終わった功平は、今日から暫く学校は休みだという。因みに私は明日、というか今からお休み。
「じゃ、そろそろ行こうか」
琇の言葉を合図に車に乗り込む笹倉兄弟と、私。今日は何と外食だそうで、面倒かけた上にここまでして貰う訳には・・・という私の気持ちは完全に無視。
私服でおいでね、と言われた意味がやっと分かった。因みに、功平が駅までわざわざ迎えに来てくれた。
「いらっしゃいま・・・・・・何だ、お前らか・・・」
「何だよ、その顔は。俺ら一応客だからね?」
車で15分位の、隣町の某通りにあるイタリアンのお洒落なお店。内装もこだわってて綺麗だし、店員さんの制服も素敵だと思っていたその時、こちらを見てゲンナリした店員さん・・・と、意地悪そうに笑う、琇。
「あれ、その子は?」
「んー、妹?」
「・・・は?」
首を傾げて私に視線を向けた、琇の友達らしき店員さん。目が合ったので、恥ずかしさを抑えて挨拶をしてみる。
妹、じゃないけど。
「へぇ、功と同い年か。大人っぽいね」
「会って早々口説くなよ、史(ふみ)」
「そんなんじゃねーわ」
昔所属していた少年サッカー時代からの仲だという、琇と同い年の友人の高田史哉(たかだふみや)。笹倉兄弟全員と仲が良いらしく・・・1時間後にバイトを上がった史哉が私達の元へやってきた。