第7章 すれ違う気持ち
「私?やってるよ、バイト」
「え、嘘!」
「本当。・・・っていうか何その失礼な反応は」
麻乃は絶対しない、いや・・・出来ないだろうと(勝手に)思っていたのに。しかも今のバイトは歯科助手だという更なる驚き。
「確かに転々とした時もあったけど、今は落ち着いてるよ」
麻乃のバイトに対する評価は基本的に人間関係らしい。合う合わないによって変わるんだとか。
「やっぱり大変?」
「まぁね、でも慣れたよ。ともみはバイトしないの?」
「ん〜・・・来年の春から始めようかなとは思ってるんだけど・・・」
「そっか。確かにその方が友達とか作りやすそうだしね」
どこか抜けててどこか少し頼りない天然。そう思ってた彼女は実際、意外にも頼もしかったり。
「で、さっきともみが話してた友達?のことなんだけどさ」
麻乃が話題を切り変える。ここからが今回の本題。
「結構大変なんじゃない?家計」
「そう、なのかなぁ・・・」
「別にバイト自体はおかしくないけど、ウチの学校でわざわざ用紙出す人なんてなかなかいないよね」
麻乃が言うこの“友達”は、実は笹倉家のこと。彼らのことであるということは隠し、一応私の女友達という設定で、かいつまんで話してみた。そして麻乃の情報によると、正当な理由でない限りは学校側から認めて貰えないらしい。
「まぁ、色んな家庭があるからね〜」
なんて、どこのおばさんだとツッコミたくなるような麻乃は、結局いつも通り深く考えることなくサラッと流す。こう見えてクヨクヨ悩んでしまう性格の私は、麻乃のこういう部分に少なくとも救われてきた。
「ともみもバイトしたら、そこでいい出会いとかあるかもよ?」
「そういうの求めてないから」
「本当、何でともみに彼氏出来ないんだろ」
「・・・余計なお世話」
(うるっさいな・・・気にしてるのに!)
結局話が逸れてしまい、私が心の片隅で気にしていたことをつつかれる始末。凄く欲しい!と思ったことはないにしろ、今まで彼氏が出来たことがないということに関しての劣等感は少なからず感じていたのは確か。