第6章 縮む距離感
あの後、お風呂上がりにも暫く功平と連絡を取っていたら、髪の毛も乾かさないままいつの間にか寝てしまっていた。おかげさまで・・・
「ふ、ぇっくしっ、!」
「風邪?ってか何それ、くしゃみ?」
変なの、と笑う妹を一睨みする私は、彼女の言う通り風邪をひいたよう。朝起きた時の脱力感と気怠さ。そしてこのくしゃみと若干の鼻づまり。
「今日休みで良かったね」
本当、ごもっとも。軽い風邪だし、今日1日ゆっくりしていればきっと治る。
「へっ、くしゅん!」
「くしゃみにもそんなレパートリーあるんだね」
「・・・うるさい」
「そういえば姉ちゃん、今週面接でしょ?大丈夫なの?」
そう、今週の木曜日に大学進学の面接を控えている為、学校を休む訳にはいかない。だから絶対、今日1日で治さなければならない。
「ちゃんと寝ないとよくならないよ」
「・・・いいの」
「・・・こんな時まで何携帯握りしめてんの」
ジトーっと下に移す妹の視線の先には、私の手に握られた携帯電話。
「ていうかさ、そのせいで姉ちゃん風邪ひいたんでしょ?」
「・・・疲れて髪乾かすの忘れて寝ちゃったの」
「それやってたせいでね」
「・・・もう、うるっさい」
鋭い妹からチクチクと色んな言葉を投げかけられ、痛くなかったはずの頭も痛くなってきた気がする。と、そんな時
「あ、噂をすれば」
携帯が一瞬震え、妹と共に画面を確認する。
「・・・・・・あれ?」
でもそれは、予想していた人と違う人からだった。
「秀、さん?」
てっきり功平からだと思っていたところに秀からの連絡。昨日私が寝てしまって一方的に中断してしまった返事を今朝功平に返し、すぐに既読マークが付いたのでこうして待っていたのだ。
「・・・何だろう」
「姉ちゃんと同じように風邪ひいちゃったとか?」
「そんな訳ないでしょ」
クスッと2人で笑って通知を開くと・・・
[突然ごめんね。昨日の疲れとかで具合悪くなったりしてない?大丈夫?]
本当に突然どうしたのだろう、と思ってしまうくらいに心配されていることが伝わる文章。私が首を傾げると、妹が画面を勝手にスクロールした。
[功が風邪ひいたから、もしかしたらともも、って思って・・・]
思わずパッと2人で顔を見合わせ、つい笑ってしまった