第1章 日常へのちょっとした変化
朝からギュウギュウの満員電車に揺られ、人の波に流されないようにと吊り革を掴んで些細な抵抗を試みる。
高校3年生、まもなく秋。
こんな窮屈な思いもあと少しで卒業なのかと思うと、心なしかどこか寂しかったり・・・・・・しない。全くしない。早く、直ちに抜け出したいこの状況。前後左右、身動き一つ出来ないこの通勤・通学ラッシュがただひたすら苦痛で仕方ない日常の朝。
(・・・もう帰りたい)
とは言え、私はたったの一駅で降りるのだけど。隣駅のくせにわざわざ電車を利用しているなんて・・・と思うかもしれないけど、これにはちゃんとした理由がある。
とまぁこの話は置いといて、私はこうしてたった一駅を毎朝電車で通学している。
「ともみ、おはよう!」
「・・・おはよ」
「今日も眠そうだけど、また徹夜したの?」
「だって、なかなか覚えられないんだもん」
「だから前もって勉強しろっていつも言ってるのに!」
そう言って軽くど突いて来るのは、親友の麻乃(あさの)。彼女とは1年生の時同じクラスで席と背の順が前後、部活も登下校も一緒。その後のクラスは違うけど、隣のクラスということもあって休み時間や昼休みはほとんど一緒に過ごしている。
「今日テスト最終日だからその後部活だけど、大丈夫なの?」
「大丈夫大丈夫!じゃあ後でね」
なーんて言ったものの・・・・・・まさかの想像以上の睡魔に襲われた私は、いつもの様に計画的に勉強をしなかった自分を責めながら、3時間ものテストに向き合った。