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一輪の花

第3章 act2









どのくらい経っただろうか。

意外にも本に夢中になってしまって、ふと外を見れば随分と日が落ちてしまったようだ。

赤い夕焼け空が見える。

その時だった。




からんからん




鈴の音が聞こえ顔を上げれば、彼女は来た。



「こんにちわリエ。今日はバイトが遅くなっちゃって…。来れないかと思っちゃった」


急いで来たのか少し息を切らせながらカウンターへ座る。


「ふふ、忙しいのは良い事じゃない。はい、珈琲」

「ありがとう」

「」


店主リエの囁き声には不思議に顔をあげる。


「どうしたの?」


勘の良いもそれに合わせ小さな声で聞くが、




「おい」



遅かった、と心で吐いた。





「あっ、貴方!」



驚いているを横目にローは極自然にの隣に座った。


「まぁ、お知り合い?」


それを見たリエはローの分の珈琲も淹れなおしながら問いた。


「いやぁ知り合いっていうか、昨日会ったばっかだし。ていうか貴方本なんて読むのね」

「悪いか?」

「別に、ただ意外だと思って。その隈は本の読み過ぎで寝不足だから?」

「あながち間違ってねぇな」

初めて会った時は暗くて分からなかったせいもあり、ローは今目の前にしたの姿に正直見惚れていた。

こんなにも近くで自分を映すその瞳に心を奪われていた。


高鳴る胸。

思い出す鼓動の感覚。

嗅覚を擽る彼女の香り。


らしくねぇな、餓鬼くせぇ…


ローは自嘲をのせた笑みを漏らした。
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