• テキストサイズ

一輪の花

第2章 act1








は微動だにせず月を照り返す波間を見つめていて。



「ねぇいつまでそこに突っ立ってるの」


綿の様に柔らかに耳へ届く彼女の声。




「お前がそこにいる目的が解らねぇからな。いつ俺達の船を襲ってくるかも知らねぇし」

「それ本気で言ってる?」

「さぁな?お前次第だ」

「ふふ…毎日私はここへ来るの。そしたら今日は黄色い船が止まってた。以上よ?」




一つ彼女の事を知った。
もっと知りたい、そう貪欲に思う。


得体の知れない感情が身体の底から湧いてきて、自分に恐怖する。



「分かったよ。あぁそうだな、この島は気候は厳しいが治安も住民もまぁ悪くない。それは知ってるだろ?」

「ええ、もちろん」

「だが、刺激が足りねぇんなら」




俺は何を言い出すつもりなんだ。





「俺と来るか?」




名前しか知らない女に。






「…海へ?」

「……冗談さ」


小さく笑みを浮かべながらローはの横を過ぎて行った。

振り返る事もなく、呼び止められる事もなくローの足は船へと進む。










足早に自室を目指す。

ペンギンはまだ店にいるのだろう。

顔を合わせなくて済み良かったと思う。

何故なら表情で悟られてしまわないか心配だから。



失った平常心に。
抱いた恋慕に。



/ 26ページ  
スマホ、携帯も対応しています
当サイトの夢小説は、お手元のスマートフォンや携帯電話でも読むことが可能です。
アドレスはそのまま

http://dream-novel.jp

スマホ、携帯も対応しています!QRコード

©dream-novel.jp