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【★ハイキュー!!★】短編集

第90章 【及川 徹】だから嫌いなんだよ



インターハイ。
今度こそ白鳥沢を負かしてやる。そう思ったけど、またダメで。
俺はミーティングの後、一人教室に向かった。
教室には誰もいなくて、夕日が教室をオレンジ色に染めていた。

一番後ろの窓側から2番目の自分の席に座る。

悔しい。

今までの努力とか過程とか、そんなの関係なくて・・。
勝った方が強いんだ。
ウシワカちゃんの方が強いんだ。

あふれ出てくる涙を拭おうとすると、教室の扉が開く。

「・・及川?」

そこには今一番会いたくない天才の彼女。
俺は咄嗟に両腕で顔を隠して机に伏せた。

彼女はガタンと音を鳴らして、俺の席の隣に腰掛けた。
察してほしい。今、年頃の男の子が一人泣いているんだ。
そこは気付かないフリでもして教室を去って欲しい。

「・・なんでここにいるの?」

俺は机に伏せたまま彼女に声をかけた。

「夕日がキレイだから。あと、及川がいるから」

「ねぇ、わかんない?俺泣いてんの。空気読んで出て行ってよ」

俺がそう言うと、左隣からガタンを言う音が鳴る。
彼女は俺の言うとおりに出て行ってくれるのだろう。
そう思ったけど・・

グイッと顔を持ち上げられ、俺はぐしゃぐしゃになった顔をあらわにさせられた。

「本当だ、泣いてる」

彼女はそう言って、制服のセーターで俺の顔を拭った。

「きれいだね、及川の涙は」

「やめてよ。どこがキレイなのさ。鼻水も出てるし」

ズッと鼻をすすると、彼女は優しく微笑んだ。

「きれいな顔をぐしゃぐしゃにして泣ける及川が好きなんだよ」

はい。とポケットからティッシュを差し出す彼女。
俺はその手からティッシュを受け取って鼻をかんだ。

「だから、俺は好きじゃないって言ってるじゃん!」

「うん、知ってるよ?」

「じゃぁ、何で俺のこと好きだって言うの?何で君のこと好きじゃないって言う俺を好きなの!?」

いつの間にか涙は引いていて、俺は鼻をかんだティッシュを丸めて机に置いた。
顔を上げると、夕日に照らされた彼女がとてもキレイでつい引き込まれそうになる。

「自分の事を嫌いな人を好きになっちゃいけないなんて法律ないでしょ?」

そう言って彼女は俺の顔を両手で包み込んでキスをした。

「ちょっ!何して・・!」

「・・どんなに及川が私を嫌いでも、私は及川のこと好きだよ」

そう言って彼女は教室を出て行った。



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