第17章 【縁下 力】隣の席は縁下くん
私が帰る頃にはすっかり外も暗くなっていて
部活も終わる時間になっていた。
「あれ~?佐藤?なーにやってんだ?」
振り返るとそこには田中くんが立っていた。
「ちょっ、ちょっと考え事してたらこんな時間に…」
「考え事してて、こんな時間って
どんだけ考え込んでたんだよ、考える人かっ!」
そう言って、田中くんが考える人のポーズを取るもんだから
私は可笑しくってお腹を抱えて笑った。
「田中早く帰るぞー!」
木下くんに呼ばれて田中くんは部室へ戻って行った。
私は慌ただしい田中くんを見送って
校門へ向かおうとしたその時、
急に誰かに腕を引かれ、体育館の影へ連れて行かれた。
「えっ、縁下く…ん?」
私は縁下くんと壁の間に押し込まれ、
身動きが取れなくなっていた。
「佐藤さん?
俺さ、佐藤さんのこと好きって言ったよね?
なのに、俺の前で他の男と楽しくして見せるって
どういうことかな?」
縁下くんは笑っているのに、とっても怖くて、
私は視線を逸らした。
「えっと…ごめんなさい」
「ふふふ。いい子だね。
あとバカが移るから、金輪際、田中と話さないで?」
「そっ、それはさすがに…無理があるよう…な」
私がそーっと見上げると、ん?何?と
また怖い笑顔でこっちを見るから
私は首を何度も縦に振った。
すると、縁下くんはいつものような
優しい笑顔で私の頭をくしゃっと撫でた。
「じゃぁ、気を付けて帰ってね」
そう言って、縁下くんの腕の中から解放された。