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第6章 そんなことが嬉しいの?


翌日、藍田くんの部屋で私は勉強道具をひろげる。

「あれ? みなみ。今日は勉強するの?」

「うん。せっかく藍田くんと一緒だし。教えてくれる?」

「いいよ」

私はせっかくだから、藍田くんの部屋で真面目に勉強することにした。

そのほうが余計なこと考えずにすむかもしれないし。

ときどき、おしゃべりしたりお菓子食べたりしてのんびり勉強する。楽しい。

そうだよ。私も彼の部屋で一緒に勉強しようって誘われて、こういうのを期待してたの。

いきなりあんなチューされたからやさぐれちゃってたわ。

「部活って冬休みもあるの?」

彼が私に尋ねる。

私は答える。

「うん。たまに」

「暇な日、デートしようよ」

「うん。いいよ」

「どこ行きたい?」

「映画」

「そっか。何か見たい映画あるの?」

んー…

「ううん。ないけど…」

「ないの?」

彼が笑う。

「うん。でもデートって行ったら映画でしょ?」

「そうかなぁ。じゃあまあ面白そうな映画探しておくよ」

「うん!」

私は嬉しくなってニコニコする。

彼もニコッと少し笑ってから再びノートに目を落とす。

私は机に突っ伏して、下から彼の顔を見上げる。

「なに?」

彼が見られてることに気づいて問いかける。

「なんでもないよ」

私は寝たフリしながら答える。

なんか嬉しい。本当に付き合ってるみたい

って思ったのは内緒。

そのままウトウトしてて、なんか気持ちいいなぁと思ったら、彼が私の髪を撫でてた。



結局、テスト前期間は毎日藍田くんの家に寄って一緒に勉強した。

「わたしは今までより勉強時間が明らかに増えてるからいいけど、藍田くんは平気? わたし勉強の邪魔じゃない?」

いちおう聞いてみる。

「邪魔じゃないよ。みなみと一緒のほうが張り切って頑張れる」

って彼は言ってくれた。

チュッてされて私が泣いちゃった日の後は、チュッもチューもされなかった。

まあテスト前だしね。基本的に。

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