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僕の小説のモデルになってください

第2章 失恋


「美味しい。こんな店があるの知らなかった。僕は友達がいないから…」

パン屋さんの前のベンチに並んで座って、私たちはコロッケパンを食べる。

空は夕暮れ、私は好きな人と二人きり。並んで座ってる。

ただ私の好きな人は他の人が好き。

彼はまだその人のことが好きなのかな。

私が彼のことをまだ好きなように。

パンを食べ終わって、なんとなく空を眺める。

「空、綺麗だね」

私は空を見上げてつぶやく。

彼も空を見上げる。

「うん。綺麗だね、空」

彼の声。胸の奥が痛くなる。

今、下手にうつむいたら涙がこぼれるかもしれない。

私は気をつけて前を見る。

「鈴原さん、好きな人いる?」

彼の声が私に尋ねる。

私は彼の顔を見る。

彼はあの優しく美しい笑顔で私を見つめる。

……。

好きな人は私の横にいる。

私は答えられなくて黙る。

上手い答えなんて考えられない。

涙が落ちないようにするので精一杯。

「僕のこと…まだ好き?」

彼の声が私に語りかける。

私の目から涙がこぼれる。

私は声を出さずに小さく頷く。

「ごめんね…」

彼はすまなそうに言う。

……。

私は失恋した。同じ人にまた。

告白してないのにまた振られた。

私の世界はどうしてこんなに残酷なのかなぁ…。

私は指で涙を拭いながら前を見る。

「鈴原さん、もしよかったらなんだけど…」

彼が私に話しかける。

私は彼のほうを見る。ほぼ無意識で。

彼の顔がぼやけて見えて、私は泣いていることを思い出す。

彼の優しく美しい微笑みがぼやけてる。


彼は言った。

「僕に男女のことを教えて」

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