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君と鼓動が重なる時・2【進撃の巨人】

第155章 ただいま



「凛の世界の範司のお蔭で、色々謎は解明された。
ミケやハンジも揃った時に、その話はしよう。」

「お前、意図的に凛の話をしないようにしてんのか?」


リヴァイの一言に、思わず言葉を噤む。


やはりリヴァイは鋭い。


意図的に、というわけでもないが、なるべくなら今、向こうの世界で凛と過ごした時の話をするのを、避けたかったのは事実だ。


口にすることで、それは過去の思い出なんだと、過ぎ去ってしまった出来事なんだと、嫌でも自分に言い聞かせることになる。

目を瞑れば、まだ凛の匂いや体温までも感じられる気がする今の状態で、彼女を記憶の産物にしてしまいたくない。

らしくない女々しい考え方は、凛に出会ってからは今に始まったことでもなくなってしまっていたが、相変わらず凛が絡むと、自分はこんなにも未練がましい。





「元の世界へ戻ったことで、凛の体調は落ち着きましたか?」

「ああ。眠り続けることもないし、健康な状態に戻ったよ。」

「そうですか。良かった……」


安堵のため息を漏らすモブリットを見入りながら、モブリットの体付きが変わったような気がした理由に、思い当たる節を見つけた。



「……モブリット。
それは、訓練のし過ぎだな?」


完全に図星だと分かるような表情を浮かべたモブリットを見て、思わず笑い声が漏れる。



「団長は相変わらず鋭いですね……」

「一週間程度でそれだけ体付きが変われば、誰だって思うよ。
リヴァイも上腕二頭筋長頭が厚くなっている。
調査前でもないのに、二人とも身体を酷使しすぎだな。」

「っ……余計な世話だ。」


舌打ちをしたリヴァイの視線は、すぐに自分から逸らされた。



リヴァイもモブリットも、俺が想像出来うる以上の、かなりの喪失感を覚えていたのだろう。

こんな短期間で、ここまで身体を鍛え上げた理由は、想像に易しい。


大人しくしていることなんて無理だった筈だ。

もしも自分が二人の立場でも、手持無沙汰な状態が数分でもあれば、気を紛らわそうと身体を鍛え上げることに専念する羽目になった気はする。

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