第141章 事実の整理

「凛がこっちの世界に戻るのに関しては、場所は関係なかったのか？」

「そうみたいだね。
その第一条件を満たした上で、想いが通じ合ってる相手と鼓動が重なることに意味があるみたい。
それはドアや壁越しに触れていても、直接触れていても効果は同じ。
でも、直接触れている場合は、触れている相手も一緒にタイムスリップしちゃうわけ。」


「……思いが通じ合ってる相手……」


一番気になる言葉を抜粋して呟くと、範司は小さく笑みを溢す。



「漠然とした言葉だけど、日記にはそう書いてあるんだよ。
愛し合ってる相手とか、相思相愛の相手とかの方が分かり易いのにね。」

「そうだな。
これじゃ、俺と凛はただ単に鼓動が重なりやすい関係だということくらいしか、確定しないじゃないか。」

「まぁそれも結構すごいことではあると思うけど。
軽く実験してみたけど、同じ時間に同じように脈を刻むのって、なかなか難しいよ。
だから二人は、かなり気が合うんだろうね。」


ふとエルヴィンと視線が重なる。

何故か少し恥ずかしくなりパッと目を逸らした。




「それで、今ここにタイムスリップしちゃったエルヴィンが戻る方法だけど。
これは結構簡単。
もう凛は生きていく力を取り戻せているから、今度はあの部屋で、ふすま越しに二人の鼓動が重なるだけでOK。
それでエルヴィンは元の世界に戻れるよ。」


範司は明るい声だが、自分の心の中はまた曇り始めていた。