第134章 何度でも
「……これさ、もう私が誰か1人に決めることなんて無理なんじゃない?」
「どうした?
急に投げやりな事を言い出すね。」
私を抱きしめたまま、エルヴィンは面白そうに笑い出す。
「二兎追う者は一兎も得ずって言うし、結局私は1人を選ぶことが出来ずに、みんなにはそれぞれ別の好きな人ができるんじゃないかなぁ、と。」
「ほう。
だが追われているのは君の方だが。」
「……うーん。
それなら、欲の熊鷹股から裂ける、かな。」
「君の世界の言葉は難しいものが多いな。
それはどういう意味だ?」
「あまりに欲が深いと、自分の身に災いをもたらすっていう例え。
欲深く三人と関係を続けているから、私にはいつか罰が当たる筈だよ。」
「随分悲観的な考えだな。
まぁ、今に始まったことでもないが。」
こっちはかなり真面目に話しているのに、エルヴィンは未だに頬を緩めている。
少しムッとした様子を醸し出そうと、エルヴィンから身体を離し、フイっと顔を背けると、すかさず顔を引き寄せられ、唇は唇で覆われた。