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【ハイキュー!!】青息吐息の恋時雨【短編集】

第44章 狭くて、 丸くて、 ただひとつ(灰羽リエーフ)



突然の質問を受けて、 その女性は指を挟むようにして雑誌を閉じると、 まず聞きいんだけど、 とリエーフの方へ顔を向けた。

「探偵っていうのは、 職業のことで合ってるかしら。 浮気調査とかをする人のこと?」

「そう!」

「じゃあ、 私は違うわ。 残念だけど」

「探偵じゃないなら刑事?」

「どうしてそう思うの?」


訊ね返す彼女の反応は占いの結果を知りたがる女の子と同じで、 自分がどう見られているのか聞くのを楽しんでいるようだった。

「雑誌を逆さまに持ってたから」とリエーフは答える。 ほら、 と伝えたかったのは、 先週見たドラマのワンシーン。

「おっちょこちょいの探偵や刑事は、 新聞や雑誌を逆さまに持っちゃうでしょ。 犯人の尾行中、 普通の人に紛れ込もうとして読まないのに適当に広げるからさ、 上下逆さまになっちゃう、 アレ」


アレ、 と言う曖昧な表現を聞いて、 うーーーん、 と彼女は熟考した後、 なるほど、 と呟いた。

「当たらずとも遠からずって感じ」と軽やかに笑う。

「私は誰の後も追いかけていないけど、 みんなの真似をしてみようと思って雑誌を買ったの。 でも普通って難しいわね、 あなたにはバレちゃった」

そう言って、 イタズラが見つかった子供みたいに柔らかくはにかむと、 雑誌を膝の上に広げた。 「何が書いてあるかわからないのよ、 私」

リエーフは身体を曲げて誌面を覗きこむ。 彼女が持っていたのは、 堅苦しい文芸誌らしかった。 見開きのページに窮屈そうに漢字とひらがなが詰め込まれている。


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