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【ハイキュー!!】青息吐息の恋時雨【短編集】

第23章 駿足アキレスあるいは兎;そもそも彼奴は亀なのか(五色工)



「女性?」
牛島は一瞬眉を潜めてから、あぁ、と呟いた。「道で声をかけられたんだ」


「うそ、ナンパ?」

なまえが食いつく。「いや、」と牛島。「壺を買わないかと言われた」


「ツボ?」

「壺だ」

「壺ですか」

「壺だ」


それって、と五色となまえの声が被った。けれどどちらも、その先の言葉を言わないでいると、「向こうは俺が高校生だと分からなかったらしい」と悠々とした説明が続く。「経済的に自立していないことを伝えたら、すぐにどこかへ行ってしまった」


「そりゃ………あれだね、不幸中の幸いね」と苦々しい顔をしたのはなまえ。「壺なんてあっても何も産み出さない」


牛島はしばし首をかしげた後に、「まぁ、飾り壺なら家にいくつかあるしな」と微妙にずれた返答をして右手をあげた。「じゃあな五色……それからなまえ、周囲に騒音を撒き散らすのは控えた方が良いぞ」


「ご忠告どうも」

つんと尖ったなまえの声を背中に受けて、牛島は休日の雑踏に紛れていった。





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「まさかキャッチセールスだとはね!」

時間泥棒!となまえは観光案内板に八つ当たりの蹴りを入れる。「っていうか騙されかけてんじゃねーよ牛島!」


そこから一歩下がった場所で、五色は臆することなく彼女の名前を呼んだ。

「この場合、賭けの勝敗はどうなりますか」

「無効試合です!」

あーんもやもやする!となまえは五色に掴みかかる。「無理!憂さ晴らしする!何か妙案は!?」

「とっておきが一つだけ」

五色は顔の前に人差し指を立てた。そして案内板の真ん中あたりを指し示す。


「天国へ行きましょう」

「天国?」

「分かりづらい場所にある天国です」

「それって、」

「そうです」


ウサギカフェ、と唇を動かす。「連れてってくださいよ」


全てがどうでもよくなるんですよね?と視線を向ける。なまえは、むう、と俯いた。沈黙その間約3秒。その後彼女が発する言葉は「やむを得ないね」の一言である。







おしまい







***

五色くんコミックスデビューおめでとう記念
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