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ぶいろく一家

第4章 三章「傍目から見たら兄弟的な。(カミセン編)」


その後しばらく周りの目が気になってしまっている私だったが、その為の男装であるし、健ちゃんがとても楽しそうだったので、いつしかその不安は消えていた。

「猫飼いたいなぁ」
「俺もー!今度みんなで相談してみよっか」
「うん!しよしよ!」

猫とたっぷり遊び、少し疲れた私達はそろそろ帰ろうと車に乗り込んだ。
しかし、いつまで経っても車は発進しない。不思議に思い健ちゃんを見ると、既に健ちゃんは私を見つめていた。思わず身構える。

「これからまた運転でしょ?」
「そうだねぇ」
「これは泉の力が必要なんだよっ!」
「はい?」

言うが早いか、健ちゃんは私に覆い被さってきた。そして有無を言わさずキスの嵐を浴びせる。
頬、額、鼻、そして、唇。

「健ちゃっ…」
「運転頑張るから、パワーちょうだい?」
「うっ…んっ…待っ…てぇっ……」
「待たない」

健ちゃんは普段可愛いのに、キスになるととても男らしいというか、情熱的だ。
口を舌で開かされ、絡まる。歯列をなぞるように口内を犯してくる。きっと健ちゃんはキスが上手いのだろう。すぐに気持ちよくなってしまう。

「は…あっ……」
「やっぱり猫より泉が可愛いよ」
「そんなことっ…ふあっ…」

ようやく口が離れる。
私は唾液で濡れた口を拭いた。健ちゃんを見ると、にこっと笑う。いつもの健ちゃんだ。
健ちゃんは豹変度が高いので戸惑ってしまうが、一緒にいて飽きない。私もにこっと笑った。
健ちゃんは「よしっ!」とハンドルと向き合った。

「もう思い残す事はない!」
「おい」
「あ!あった!」
「なに?」
「泉の処女を奪わないと」
「へし折るぞ」
「さ、帰ろ!……うまくいけばだけど」
「私電車で帰ります」
「一緒に死んでよ!!」
「なんでそんなに自信ないのに車で来たんだよ馬鹿が!!」
「かっこいいとこ見せたかったのー!」
「今最高にかっこ悪いからな!?」

そんな言い合いをぎゃあぎゃあとしている外で、数人の女性が遠目にそれを見ていた。


「…どういう事?三宅君と一緒にいるの…女?」


第三章 完
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