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奈落の底から【BLEACH】

第3章 blue


何一つ変わらない零番隊の隊首室は誰かが定期的に掃除していた様で。
広いのに隅から隅まで綺麗にしてある。
机や椅子もそのままの状態で保たれていた。

(どうせなら改装してくれた方が良かった。)

思い出したくない過去が一つ、また一つと浮かぶ。

全て忘れ去る事は出来ないのだろうか。

襲い来る疲労感に負けて専用の椅子に腰掛け、艶斬を呼んだ。
特に意味の無い呼び出し。
寂しさを紛らわすため。自分には寂しさなんて無いんだと思い込ませるため。

一人が良い。独りで良い。

でも誰か、誰でも良いから傍に居て欲しい。

そんな願いが知らず知らずの内に芽生えていたのかもしれない。

「またここに来るなんて思いもしなかった」

快く来てくれた艶斬に目も合わせず話し掛ける。

『確かにね。でも、僕はまた君に仕える事ができて嬉しいよ。』

具象化した艶斬の姿すら見ない。

「あなたも物好きね…。」

『そうかい?僕はあんまり自覚がないけど』

「うん。自覚がある方がおかしいね。」

挙げ句の果てに机にうつ伏せになる。

『疲れてるのなら僕の世界に来てくれていいんだよ?』

「…今は遠慮しておく。何もしたくないの。」

『そう。またいつでも呼んで。』

「うん。」

(雲雀の心境は分かってるから、なるべく刺激しない様に…。
僕が今すべきことは激励する事じゃない。
僕は待ち続けるよ。君が、本当に帰ってくるまで。)

あの日が来るまで私は艶斬のいる世界が大好きだった。
毎日のように会いに行き、時間を忘れてゆうゆうと過ごしていたのに、今では行こうと思えない。

一番好きで、一番憎い
あの一色に染まっているから…。
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