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るろうに剣心【東京編】

第10章 動く理由




相楽さんがいるであろう寝間の襖をあける
背中の悪一文字は、少し不貞腐れたようにこちらを向いていた

『相楽さん、これ食べてください』
「いらねェつってんだろ」
『…でも』
「あの女が作ったやつなんか喰えるか!!」

なんでそんなにムキになるの?
腹が立つのはいいとして、八つ当たりするのは少し違う気がする
なんか、私もむかむかしてきちゃった

『私が作ったおはぎでも食べられませんか!?』

少しイラついていたのも手助けしたのか、思ったより大きな声が出てしまった
そのことに相楽さんだけじゃなく、私自身も驚いた

『初めて作ったおはぎなので、食べた感想を聞きたいんですけど……』

苛立ちと大声で、少し気まずくなり私は下を向く
もし、“いらない”と言われたら、私が食べよう
仏の顔も三度までというし、これ以上執拗にしてしまったら
それこそ、彼の機嫌を損ねてしまう

「………」

ふいに、右の手が軽くなった
顔を上げてみると、おはぎを一口で食べる相楽さんがいた
口を動かし、そして、それは彼の喉を通った
もう一つのおはぎもまた同じように、彼の喉を通っていく

『あ、味のほうは…』
「……うめぇよ」

食べてくれたことと、その言葉に私は満面の笑顔をこぼした
すると、相楽さんは驚いたようにこちらを見る

「お前、そんな風に笑えるんだな」
『……え?』
「なんつーか、びっくりした」

最近は笑うことは増えてきたが、さっきのように無邪気な笑顔なんて、したことはなくて
だからといって何が悪いとかそういうことではないのだが
こういう風に驚かれたりすると、なんか妙に緊張するというか、恥ずかしいというか
いろんな感情が湧き上がり、顔が熱くなる

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