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るろうに剣心【東京編】

第6章 喧嘩



『……あの』

私は相楽さんに近づき、声をかけた
返事はしなくていい
ただ、言いたかった

『助けてくれて、ありがとうございました』
「助けた覚えは……」
『覚えてなくても……私は助けられました』
「そう、かい……」

また、笑う
先ほどの喧嘩と打って変わり
そこには穏やかな時間が流れていた

私がずっと抱いていた違和感
その感覚を私は知っていた

きっと彼と私は似ているんだ

喧嘩をしている間は苦しいことも悲しいことも全て忘れられていたんだと思う
だけど、それが終われば過去の記憶や自分への後悔に苦しめられる
その繰り返しだったのではないかと思う
満足しているようでしていない
そんな矛盾を抱え、彼は今まで喧嘩をしていたんだ
自分の首を絞めているとも気が付かずに

私も同じだ
先日、弥彦君が私の左手首にある傷を見つけ訪ねてきた

“その傷どうしたんだ?”
“ただのかすり傷だよ”

その時私はそう答えた
しかし、それは嘘だ
この傷は自傷の傷だ
生前、苦しいことやつらいことがあるたび、自分を傷つけて血を流しては安心していた

“あぁ、自分はまだ生きている。自分はまだ人間としていられている”って思えた
でも、その傷を見るたび
苦しみ、悲しみ、辛さ、後悔、全ての感情が呼び起され、自分を苦しめた
その苦しみから解放されたくて、また私は私を傷つけていた

でも、今は違う

「医者連れてきたぜ!!」

この傷を見ても苦しみは襲ってこない

「あとは医者に任せて、拙者たちは帰るでござるよ」

たぶんそれは、

「何やってるの真愛!早く行きましょう!!」

信じられる人たちが、頼れる人たちができたからだと思う

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