第6章 喧嘩
私は細身の人のところへ行き
『あの……』
「どうしたい?」
『先ほどはありがとうございました』
「何、好きでやった喧嘩だ。礼を受けるもんじゃねえ。それより、騒がしくしてすまねえな。怪我は平気かい?」
『あ、はい……』
「女が顔に傷つけるもんじゃねえよ。綺麗な顔が台無しだ」
……綺麗?
誰の顔が?
もしかして……私?
顔が熱くなるのがわかる
そんなこと言われたのは初めてだ
自惚れるわけじゃないけど
お世辞かもしれないけど
それでも嬉しいものは嬉しい
そして彼は去って行った
背中の悪一文字を残して
「真愛ちゃん、今日はもう帰っていいよ」
『でも……』
「怪我しとるんやからゆっくり休みなさい」
妙さんの言葉に甘え、私は薫さんたちと一緒に帰ることにした
『あの……。明日は頑張ります』
「ふふ。期待しとるよ」
私は“はい”と笑って答えた
道場に戻れば、私は薫さんに説教された
「正義感強いのもいいけど、怪我しちゃ意味ないでしょ?無茶はしないでって何回言えば分るのよ」
『ご、ごめんなさい』
「たいした怪我じゃなくてよかったわ、本当に。あなたが怪我一つでもしたらみんな心配するんだから」
『……心配、してくれたの?』
「当たり前でしょ!だからこうしてあなたに説教してるんじゃない」
『ありがとう。でも、無茶はまたするかも』
「……」
『初めて居場所ができたんだ。すごく居心地のいい……。だから私は、それを守るためなら無茶、するかも……』
守るといっても、私にできることは小さいことかもしれない
でも、それでも、その小さいことでも積み重ねれば大きいものになっていく
『守らせて、私の大事な人とその居場所を』
護身術として短剣術と体術を習ってきたが
それが役に立つときは今かもしれない
そのあと、弥彦君が私のところに来て
薫さんと同じことを言われた
似たもの同士だなぁ