第3章 大きい籠小さい籠
最近私のものがよく無くなる……
これは偶然ではないと思う
明らかに最近周りの視線がおかしいことにくらい気がついている
「あの子でしょ。市丸さまのお気に入り」
「あら?簪もつけないなんて余裕ねぇクスクス」
小声で言っているつもりらしいが全部聞こえている
はぁ…
世の中ってのは厳しいものだねぇ…
あの簪が無くなるのも時間の問題かなぁ
それは…
私が記憶を無くす前から持っていたらしいもの
たった一つの過去への鍵だから…
絶対に守らなきゃ
「今日は市丸さまいらっしゃらないのかしらねぇ?クスクスあなたちょっとこちらにいらして下さるかしら?」
「え?」
私は半ば強制的に部屋へと引き釣りこまれてしまった…
「なっ…なんなの!?離して!」