第13章 君じゃなきゃ
「誰か! 誰かいませんか!!?」
声を張り上げる。けれど、聞こえるのは雨音だけ。
「何してんの私は……」
ほんと、最悪なのは私だよ。色々考え込んで、訳が分からなくなって一人でぼうっとしているから……。あの時一緒に黄瀬と共に戻ればよかったのに。
後悔先に立たずとは、まさにこのことか。
「どうしよう、携帯もないし……連絡さえも取れないなんて」
はぁ……。溜息をついて項垂れる。
「……ん?」
微かに、何かの音が聞こえた気がした。空耳? いや、違う……?
「っ……! 有栖っ!! 何処だ!? 有栖――!!!」
「!! 青峰? 青峰っ!!!」
「あ……? こっちか!?」
青峰だ! でも、なんで?
青峰は私の声を頼りに、こちらまで駆け寄ってきた。彼の姿を視界に入れ、もう一度声を張り上げると驚いた顔でこちらを見下ろした。
「はあ!? おまっ……なんでそんなとこに!?」
「ごめん! えっと……足を滑らせちゃって……あと、その……落ちた時に肩をぶつけて、一人でよじ登れなくて」
「肩を……? 待ってろ。今助けてやるっ」
青峰は軽々と崖を上手く降りてくると、私に近づきゆっくりと肩に触れた。