• テキストサイズ

【黒バス】透明な君に恋してる

第3章 夕陽が沈む頃



「何、黄瀬ちんと帰るの?」

「いや……別にそういうつもりじゃないんだけど。彼が勝手に……薄暗くなってきたから、女の子一人じゃ危ないよって」

「ふぅん……なら別に黄瀬ちんとじゃなくていいよね?」

「ん?」

「行こう」


 大きな彼の手が、私の手を包み込む。ぐっと手を引かれ、彼の隣に並ぶ。横から彼を見上げるのは、昨日ぶり。襟足まで伸びた髪が、首筋が、中学生のわりに色気があって、ついつい見惚れてしまう。


「どうしたの? 有栖ちん」

「っ……! ううん、なんでも……ないよ」


 どうしよう、この手を握り返してもいいのかな?

 迷いながらも、恥ずかしさで俯く。


 男の子の手って、こんなに大きいんだ……。すっぽりと私の手を包み込んでしまうほどに。暖かくて、手汗かいちゃったらどうしようなんてことまで、考えてしまう。ああ、緊張してきた。

 思い切って手を握り返せば、ぴくりと敦君の手が反応を示す。


「……バーカ」

「えっ!? な、なに!!?」


 さっきよりも強く、ぎゅっと握られて頬が熱くなるのを止められない。



 昨日は、傘が私達の間に入っていてくれたけど、今日は何もないんだと思うと無意識に彼を意識して、隣に居るんだということを感じさせられる。掌から鼓動の早さが伝わったら……そう考えてしまうと外の音がまったく耳に入らなくなってくる。

 そっと彼を見上げると、いつもと同じ気だるそうな顔をして、真っ直ぐ前を見つめていた。


 その瞳に、私が映らないものかと、期待してみる。

/ 123ページ  
スマホ、携帯も対応しています
当サイトの夢小説は、お手元のスマートフォンや携帯電話でも読むことが可能です。
アドレスはそのまま

http://dream-novel.jp

スマホ、携帯も対応しています!QRコード

©dream-novel.jp