第1章 プロローグ
キイイィィィン……ザシュッ…
「うわああぁぁぁぁぉぁぁあ…」
ドサッ
目の前で繰り広げられている戦場
血で赤く染まった大地
相手を容赦無く斬り倒していく人々
転がっている死体の数なんて数えられたものじゃない
そんな何とも言えない残酷な光景を背に、小高い丘の上で一人悲しげに佇む少年がいた。
ただただ目の前の敵を殺すことしか考えてない者達が無様に散っていく姿を見るのが痛々しく思えたのだ。
そんな中、一際目立つ銀色の侍。
血を浴びて戦場を駆け抜ける姿はまさに『白夜叉』だった。
「…あれが白夜叉。」
そう呟いた少年はその場にゆっくりと仰向けに崩れ落ちた。
そして小さな手を伸ばして空を掴むように拳を握った。
水のように透き通っている深い藍色の瞳は空を這い回る火の粉を映していた。
「どうせ天人が勝利を収めてこの攘夷戦争も終わりを迎えることになる。」
長いまつげを伏せ、深いため息をついた。
少年はもう一度戦場に目を向けた。
相変わらず続いている無意味な戦い
「…『刀は人を殺るためにあるんじゃない。ひとをまもるためにある』…か。随分と的外れなことを言ったもんだ」
いつしか聞いた懐かしい言葉を口にしてみるも、そんなのただの綺麗事にしか思えない
現にこうして他人の命を奪うことしか考えてないじゃないか。
ガチャ
不意に頭上で鈍い音がした。
「おいガキ。ここで何をしている?」
…ついにここまで来たか。
「べつに…。僕がここで何をしていてもお前らみたいな能無しの天人には関係ないさ。」
「なんだとこのっ…!」
吐き捨てるように言った言葉は案の定天人の怒りに火をつけた
相手はざっと14人くらい…か。
少年は静かに微笑んだ
ーーーー僕に血を捧げてよーーーー
月明かりを浴びた少年の髪は黒から紫へと色を変えていた。