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遺書 今日だけのさようなら

第1章 1枚目




こんな毎日が、どのくらい続いていたでしょうか。

バイバイ、さようなら。
別れの言葉は言うことのなかった日々。

朝、ご飯を作ってるとあなたが起きてきて
「今日は夜遅くなるかも。」と私に告げるのです。

そんなことはメールしてくれればいいのにって笑うと
あんたはいつもあたしを待つつもりでいるからって苦笑いされて。

大して美味しくもないいつもの味噌汁をすすりながら、
つけっぱなしだったテレビの天気予報を見たあなたは
「今日は午後から雨降るんだって。」
そんなことは30分前に同じ事聞いたから知ってるんだけど
「そっか。気をつけなきゃね。」
とか返しておきました。

「この漬け物美味しいね。どこで買ったの?」
「実家から送ってもらったんだよ。」
そんなどうでもいい話をしながら、朝食の時間は刻々と過ぎていきました。

ご飯を食べ終えると、あなたは顔を洗って歯を磨いてメイクをする。
洗面所は占領されてたから、私はどうせあなたが忘れるだろう折りたたみ傘を
ちゃんとあなたが愛用している鞄に入れておきました。

洗い物を終えると、ちょうどメイクが終わったらしく、
さっきのあなたとは違う、仕事の顔をしたあなたと顔を合わせました。


やっぱり、いつもの朝だった。


薄い紺のジャケットを羽織って、軽く袖を捲る。
一つ一つの仕草が愛おしい、いつもの朝だった。

「それじゃ、行ってきます。」

だから、ちょっとだけ違う物にしよう。
特別な朝にしよう。


「真理ちゃん、・・・・・・さようなら。」


今日だけは。





あなたは私の言葉に気づかないまま、家を出ました。
これで良かったのです。

私は深呼吸をして、今度は自分の出かける準備を始めました。

傘は必要ありません。



必要なのは、勇気だけです。



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