第7章 不動峰☆伊武 深司 編
栗田『気になる…の?』
伊武『うん。』
栗田『…何か、嬉しい。』
伊武『俺も。』
フト、ショーウィンドーに映る自分達の姿が目に入った。
今は、こうして二人で一緒にいる。
気負わなくて、話しやすい栗田。
さっきの学校で想像していたことを思い出した。
伊武『俺……栗田のことが好きなのかな?』
栗田『へっ?突然どうしたの?って、どうして疑問形なの?』
伊武『嫌だって思ったんだ。こんな風にさ…栗田が他の男といるのを想像したんだ。やっぱり…好きなんだろうな、俺。』
栗田『何か……伊武くんらしいよ。でも、私の独りよがりじゃなくて良かった。』
伊武『栗田はさ…俺でいいの?』
栗田『うん。伊武くんだからいいんだよ。』
二人で顔を合わせて、小さく笑った。
熱烈な…そういうのじゃないけど、俺たちは俺たちのペースでやっていけばいい。
穏やかで…お互いの存在を必要としていて……。
クラスメイトや周りから俺を悪く言う奴らの声が上がったけど……俺の代わりに、栗……香が憤慨していた。
でも、周りから認知されつつある頃、橘さんから合同合宿の話を聞いたんだ。
夏休みに入って直ぐの、日程は2週間。
2週間か……長いな。嬉しいけど……。
ただ……浮わついてるとか言われるだろうけど、彼女に会えないのは嫌だ。
少し思案していると、橘さんから更に提案があったんだ。
不動峰からは3人のみの参加で、雑用係と称して彼女を同伴させてもいいらしい。
杏ちゃんに頼もうと思ったらしいけど、香のことが頭を過って俺に提案してくれたんだ。
聞いてみないと分からないけど……きっと、手伝ってくれると思う。
頼んでみよう。
楽しみだな……たださ、香に的割りついてくるヤツがいたら、遠慮なくぶっ潰そ!
伊武 編 終わり