岩泉夢?を更新しました
かなりやりた放題しています。もうしわけありません。岩泉夢かも怪しいです。
この間の澤村SSを修正しましたので、再度おいていきますね。
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はぁ、と息を吐くと、とたんに目の前が真っ白になる。冬が来たと感じる瞬間だ。わたしの隣で澤村が両の手のひらを擦り合わせて暖を取っていた。
「ね、大地。はい」
ぽん、と右手を差し出すと、澤村は「はぁ?」とでも言いたげな視線をこちらに寄越した。これだから鈍感な男はいけない。というか、わたしという恋人と東峰が同列扱いってどうなんでしょうか。
「あんた良すぎるくらい代謝いいじゃん。どうせ今も体ぽっかぽかでしょう?わたしの冷たい手で涼をとればいいさ」
「お前さ、今俺がどうして手をこすってたかわかってる?」
「わーかってるわかってる、私のために手汗をふいてくれていたんだよね?んもう、素直じゃないんだからんっ」
むりやり彼の手をとって握り込むと、澤村はびびびっと電気でも走ったかのように身震いした。
「……雪女のような冷たさだな」
「雪女のように美しいと言って頂戴」
わたしの大切な彼氏は呆れ返ってこちらを見る気配もない。わたしはぎゅっと澤村の手を握った。
「うわっ、おま、冷たいって……」
「もうすぐさ、」
食い気味に、彼の声とわたしの声を重ね合わせる。気がつくとわたしは自分のローファーと睨み合いっ子していた。
「もうすぐ……センター試験だね」
「……そうだな」
澤村は今年の初夏、冬に行われるバレーボールの大会――わたしは正直あまりよく、わかっていないのだけれど――それに三年生ながら出場することを決意した。わたしと彼は同じ進学クラスで、同じ大学を志望している。しかし澤村は日々の練習がアダとなって成績が伸び悩み、この間の模試ではついにCランクをとってしまった。このままでは受かるかどうか綱渡り状態である。
澤村は決して天才ではない。彼がバレー部主将なのも、進学クラスに在籍していることも、全ては彼の血のにじむような努力の結果だ。バレーに命をかけていると言っても過言ではない現在、勉学のほうが疎かになるのは当たり前だと言ってもいい。
そうわかっていても、わたしは不安を感じずにいられない。澤村は本当に後悔していないのだろうか?澤村にとって最善の選択だったのだろうか?
[作成日] 2014-12-09
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