私の“年上の男”
私には生涯、忘れる事の出来ない人がいます。
高校時代、いい加減な私を優しく抱き締めてくれた先生です。
「卒業するまで待ってる」
そう笑ってくれた先生。
でも、私のワガママで先生は学校を去る事になりました。
高校2年生の夏でした。
それでも、私は先生を忘れた事はありませんでした。
結婚し、子供ができ、年を重ねても…
心のどこかに先生はいてくれました。
いつか会えたなら。
あの時言えなかった「ありがとう」と「ごめんなさい」を伝えたい。
いつか会えたなら。
「あの時、私の事も大事だったでしょ?」
恋人がいた先生に、そんな事を聞いてみたいと思っていました。
つい先日、先生が交通事故で亡くなっていた事を知りました。
もともと車の運転が荒い人だったので、あの頃よく冗談で「事故って死ぬよ」と言っていたのですが…
本当に死んでしまいました。
もう、私は先生に会う事は出来ません。
それでも、私の心の中から先生はいなくならないでしょう。
来年、雪が溶けて春になったら…
先生が亡くなった場所へ行こうと思います。
「ありがとう。そして、ごめんなさい。
あの時の私のワガママを、どうか許して下さい。」
そう伝えに。
そんな、私の“年上の男”の話でした。
minami
[作成日] 2020-11-16
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