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日記
ガイSS「サスケとガイ」

暗い夜道を任務終わりの重い足で歩く。
ここは里の外れ、うちは一族の敷地内。

何故オレがこんな時間にこんな場所を歩いているかと言うと、単にタイムアウトで【阿吽の門】が閉門してしまったからだ。

目の前に里があって、尚且つ雲行きの怪しい空模様では野宿したくもなく、オレはうちは一族が警護していた裏門から里に帰還した。

門は、特有のチャクラを流して解除する仕組みだ。
本来そこを護るべき人間は、ひとりの子供を残して滅亡したのだから、これは急拵えの施錠だったのだろう。

「…悲劇の一族、か…」

天才といわれる忍を幾人も輩出してきた名門の一族。
しかしイタチというひとりの若者によって、血に塗られ、滅亡した。

「…イタチには弟がいると聞いたな…まさか、こんな場所で暮らしているはずはあるまい…?」

生き残りの子供がひとりで暮らすには、この場所は冷え切っている。

「…様子だけ、見てくるか」

縁もゆかりもない人物だが、妙に気になりイタチの生家に向かう。この辺りは特に血の臭いが濃く残っている気がした。

「……」

気配を探る。誰もいない。
そうだ、こんな場所に子供が居て良い筈がない。両親が兄に惨殺されたこんな場所に──

「ん?」

オレの聴覚が、ほんの微かに聞こえた人の声を感じ取る。オレは、気配を殺し声の聞こえた方向へ足を向けた。

そこには、

真っ暗な墓場に立ち尽くす、ひとりの子供がいた。

「………」

一族の墓に違いない。
少年は、ただ無言でその場に立ち尽くしていた。

あまりに侘しいその小さな背に、オレは言葉を失う。まだ10にも満たない子供が独りで背負うには、この孤独は重すぎる。

「……キミ」
「誰だっ!?」

驚かさないように控え目に声を掛けたつもりだが、子供はクナイを抜き取り攻撃態勢をとった。

なるほど、アカデミー生にも満たない年端でも、うちは一族ということか。

「テメェは誰だ!?またうちはを荒らしに来たのか!?」

最初、少年が何を言っているのか分からなかったが…

「そうか、この面をしていたら怯えてしまうな」

オレは暗部の面を惜しげもなく外して顔を晒した。その事に少年は逆に狼狽する。

「そんな…簡単に外して良いものなのか…?あんた暗部なんだろう?」
「ほう。暗部の事も知っているのか。優秀なんだなぁ」
「…暗部は嫌いだ。現場検証や証拠保全とか言ってオレの家を荒らしやがった」

少年の顔が醜く歪む。
こんな子供にこんな表情をさせてしまっていることが申し訳なくて、オレは咄嗟に謝罪した。

「それはすまなかった」
「…なんで、アンタが謝るんだ…」

訝しげにオレを睨む子供に、オレはふむと頷く。

「キミの心を乱した事を謝ろう。それに勝手に敷地内に侵入した事も」
「……どうせこの土地は更地になる。もううちは何て関係ない」

誰がどうこうしようが勝手だと、少年は吐き捨てる。

「…少年よ、あまり躍起になるなよ」
「…何が言いたいんだ…?」

少年の目に、怒りの火が灯った。

「うちは一族は無くなったが、キミは由緒ある血を継いでいるんだからな」
「…っ、キレイ事言ってんじゃねぇ!!」
「本当の事さ。任務でうちはの人間と組んだ事があるが、皆優秀な忍だった。誇りを持って良い」
「…何が…誇り、だよ…」

怒りに歪む顔に、涙が走る。

「だったら…テメェ、オレを殺せよ!」
「分からん奴だな…何を言って…」
「オレを、誇り高いうちはの末裔として、死なせてくれよ…っ!」

少年の口から出た言葉に、オレは愕然とした。とても子供の言う言葉ではない。

きっとこの子は、兄に裏切られ、家族も一族も失い、里人から畏怖の眼差しにさらされて…死を望む程の絶望の中にいるのだ。

「…頼む…オレを、殺して…」

オレにクナイを押し付けて、縋るように泣く子供。

「……」

オレはそんな様子を見ていられずに、零れそうになる涙を面を被って隠した。

「…目を閉じろ」

肩の力を抜いて、暖かな光を思い浮かべるんだ。

「…キミの親父さんとおふくろさんは、笑っているか?」
「…うん…」
「キミも、笑っているか?」
「……うん。兄さんも、優しい兄さんのままだ」
「そうだな。キミは幸せだった…おやすみ、良い夢を」

そう囁いて、頸椎に手刀を入れると少年はグニャリと崩れ落ちた。

「…死んではダメだ。キミの青春は、まだ始まってもいないのだから」

オレは少年を担ぎ上げる。
あまりに幼いその体に計り知れない程の悲しみを抱えて、少年は生きていくのだ。

生きていれば、きっと笑える時がくる。幸せを掴めるはずだ。
キミは芽吹いたばかりの、小さき青葉なのだから。

「少年よ、醜くく這いつくばってでも生きるんだぞ」


それは、虫の音も聞こえない…
冷めた夜の事だった。

[関連ジャンル] 二次元  [作成日] 2014-12-28 17:45:09

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