ありがとうの気持ちを込めて・・・
リヴァイと貴方のショートストーリー
『 Voyage 』
ザザーン・・・
ザザーン・・・・・・
足にまとわりつく、小さな白い泡。
見渡す限り広がる、青、青、青。
空。
海。
水平線。
それぞれが微妙に違う青に、リヴァイは眩しそうに目を細めた。
「リヴァイさん」
少し後ろから聞こえる、愛しい声。
自分と同じように素足を海水に浸け、時折波に足をすくわれそうになりながら歩いている。
転ばないように、二の腕を掴んで身体を支えた。
「ありがとうございます」
太陽の下で笑う、その顔に目を奪われる。
誰もいない砂浜。
後ろには延々と続く、二人だけの足跡。
幸せだった。
「リヴァイさん、あれ」
指をさした方を見ると、真っ白な帆が見える。
風を受け、どこへ行くのか。
帆船はゆっくりと、ゆっくりと沖の方へその姿を小さくしていく。
「どこへ行くのでしょうね」
風の赴くままか、
波の赴くままか。
「さあな・・・お前だったら、どこへ行きたい?」
「え? そうだな」
少し考えこみ、長い睫毛に縁取られた瞳を水平線に向ける。
「どこへでもいいです・・・貴方と一緒なら」
風の赴くままに、
波の赴くままに。
貴方と一緒なら、どこへでも。
「ああ・・・そうだな」
様々なものを見て、様々なものを感じよう。
お前と一緒なら、終着点がなくてもいい。
永遠に・・・
ザザーン・・・
ザザーン・・・・・・
目が覚めると、そこは調査兵団兵舎にある自分の部屋だった。
あの太陽も、砂浜も、海もない。
半分寝ぼけながら、体を起こして頭を掻いた。
「・・・リヴァイ兵長?」
ベッドが急に軋んだせいだろう、傍らで寝ていたが目をこすりながら見上げてくる。
「悪い、起こしちまったな」
「どうしたんですか・・・?」
「いや・・・夢を見てた」
「夢?」
「・・・・・・・・・・・・」
あれ・・・どんな夢だったか・・・
「海・・・とか言っていた気がするんだが・・・」
「うみ? 何ですか、それは」
「・・・さあ・・・なんだか、辺り一面がすべて水で・・・巨大な湖のような・・・地面は砂だった・・・」
思い出せない。
「でも、お前と一緒にいた」
「私と?」
それまでキョトンとしていた顔に、笑みが浮かぶ。
ああ、この表情は夢の中でも見た。
あの光景は、この壁の中には存在しないものだ。
でも、もしかしたら“外の世界”にはあるかもしれない。
「どこか分からねぇが、悪くなかった」
「私も見てみたかったな」
布団の中で手を繋ぐ。
その温もりが優しくて。
リヴァイはそっとその額にキスを落とした。
「じゃあ・・・いつか探しに行くか。どこにあるかも、本当にあるかも分からねぇがな」
夢で見た光景だ、あのどこまでも青が広がる場所など、ないかもしれない。
それでも・・・
「どこへでもいいです・・・貴方と一緒なら」
そう言って微笑む。
「貴方の瞳に映るものを見て、貴方の足が向かう場所に行きたい」
きっとこの世界は広い。
まだ知らないことがたくさんあるはず。
ひとつ、ひとつ、愛する人と一緒に知っていきたい。
調査兵らしい願いではないか。
「ああ・・・そうだな」
だから・・・
本当の平和が訪れたら、二人だけで旅に出よう。
リヴァイは、もう一度同じ夢が見られるよう祈りつつ、
ゆっくりと瞳を閉じた。
『 Voyage 』Fin.
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