日記あの時――
俺は、あの嬢ちゃんに“叫ばせた”。
……いや、違ぇな。
正確には、“叫ばせちまった”ってとこか。
多分、あんなに大声を出したのは、
生まれて初めてだったろうよ。
顔を真っ赤にして、目をギュッと閉じて、
小さな身体に、目いっぱいの力を込めてさ。
あぁ。――言わせなきゃ、ならねぇと思った。
あいつが、目前の恐怖を
自分の想いを、ちゃんとぶつけられるようにってな。
俺の中じゃ、ただそれだけのことだった。
けどよ。
あいつの声が響いた瞬間――
空気が、変わった。
あの場にいた奴らの目の色が変わった。
あいつ自身の目の奥が、変わった。
“覚悟”ってのは、目に見えねぇ力を持ってる。
覚悟を持った人間の“咆哮”ってのは、
聞いた誰かの魂まで揺さぶるんだ。
……まいったね、こりゃ。
俺自身、思い知らされたよ。
言葉はただの音だ。
だけど、本気の音は、剣よりも鋭ぇ。
嬢ちゃんは、それを持ってる。
持ったんだ――あの瞬間に。
さぁて……そうと決まれば話は早ぇ。
俺も、やるだけやってやろうじゃねぇか。
俺の背中も、そんな声に押されるくらいが丁度いい。
そういうのが、俺ァ一番好きなんだ。
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