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日記
見つめなくていいよと、ここから僕は君に伝える。

濡れた枕の冷たさで目が覚めた
窓に張りつく朝露が
差し込む光で反射してる


無言でしばらく眺めて
この景色を君にも見せたくなった




ほら、見てみてよ
昨日いつの間にか雨が降ったんだ
もしかしたら虹がかかってるかもしれないね
今日は休みだし散歩にでも行く?


君の大好きなあのパン屋さんへ行こうよ
店に近付くたびにどんどん早歩きになるよね
そんなに食べたいのって僕が言うと
君は少しむくれた顔で
いいじゃんって手を離すんだ


照れくさそうな君は先に店に入ってく
口には出さなかったけど
かわいいな、なんて思いながら
あとを追いかけていたよ






ねぇ
君はそっちで笑ってるかい
冷たい指先は相変わらずかな
何度も何度も僕は手をとってあたためたけど
きっと今は1人であたためてる




できるなら寄り添って
シワだらけの君まで丸ごと守りたかったよ
きっとその頃の僕は恥ずかしがらずに
かわいいな、って言えるようになってるはず
そんで慣れたように何言ってんのって
君に言い返されるんだよ






そんな夢を
僕はまだ
捨てられない






お願いだから還ってきてよ
僕1人じゃほんとだめで
何もかも全部とまるんだ
物がどこに閉まってるかもわかんないし
あれどこだっけって独り言さえつぶやく


言葉が返ってこないのはやっぱ寂しいよ
もうあのパン屋さんは
思い出があり過ぎて行けないんだよ
目の前の道でさえ通れない自分に
いつまで引きずってんだって言いたい




今朝の朝露も
キラキラした光が好きな君に
どうしても見せたくて
寝返りをうって
ほら、見てみてよって声に出した


返事がないのは寂しいんだけどね
でもまだ僕の中で君はいるから






僕の中で
まだ君は
生きてる




ずっと一緒に
生きてるから






もう安心していい
そうやって心配そうに空から
見つめなくていいからね


還ってきてほしいのは
どうしても隠せない本音だけど
それで君を困らせるのは
もっといやだ


こんな風に僕が上ばかりを見ていたら
いつまで経っても君は
落ち着かないよね
足元がおぼつかない僕に
こら、って声が聞こえてきそう


こうしてるとなんだか
本当に君と話してるみたいだ
そろそろ見上げるのはやめにして
まずは濡れた枕を
洗濯に出すところから始めてみるよ
少し、前を向いていこうかなって
やっと今思えてきた


……ほっとした?








君に触れられないのは
やっぱきついけど
残してくれた思い出を
かき集めてかき集めて
どうにか君の面影をつくるよ


きっと50年くらいしたら
君の元へ行けると思うから
それまで待ってて




空で 待ってて


[関連ジャンル] 完全創作  [作成日] 2021-03-22 19:45:39

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