今日はエルヴィン・スミス団長の誕生日。
リヴァイ夢を書いていた私ですが、「進撃の巨人」で最初にハマったのは団長でした。
本当はちゃんとお祝いしてあげたかったのですが、書き殴りショートストーリーで、こっそりとお祝いさせてください。
誰よりも少年の心を持っている団長。
お誕生日、おめでとう。
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『ピエタ』
開け放した窓から吹き込む風で、白いカーテンが揺れる。
日当たりの良い一室で、エルヴィンはゆらゆらと水に漂うように横たわっていた。
穏やかで、静かで、温かくて。
まるで胎内のように安らかだ。
最後に睡眠をとったのはいつだっただろう。
そう思えるほど激務に追われる日々。
自分の夢を追いかけ、
そのために多くの部下と仲間を殺し、
飽き足らずに有望な新兵達を勧誘しては、
自分の夢のために彼らを殺す。
その繰り返し、繰り返し。
ふと目を覚ましたエルヴィンは、掠れた声で呟いた。
「・・・私は死んだのか?」
身体はどこも痛くないのに、力が入らない。
否。
力を入れることを忘れるほどの心地よさに、いつまでも身をゆだねていたかった。
ゆっくりと目を開ければ、柔らかな光。
それを背にしながら一人の女性が、顔を覗き込んでくる。
眠るエルヴィンを膝に抱えていたのは、彼がこの世界で最も美しいと思う人。
「貴方には、ここが死後の世界に見えるのですか?」
死後の世界…?
視界の端に映る景色は、調査兵団の団長室だ。
膨大な書類、作戦企画紙、地図、立体機動装置、そして死亡者名簿。
エルヴィンは微睡ながら口元に笑みを浮かべた。
「私が死んだら行き着く先は地獄と決まっている」
左手を伸ばし、滑らかな彼女の頬に触れる。
「だが、君のように美しい人が地獄にいるわけがない」
それはあまりに幸せすぎる。
「かといって、君のように美しい人が住まう天国に行けるはずもない…」
それはあまりに残酷すぎる。
「だから、私はまだ生きているということになるな」
エルヴィンの身体を包み込む手。
彼を抱く女兵士は悲哀を漂わせていた。
「団長…今日だけはどうか、自分を許してあげてください」
死ぬ方がずっと楽。
そんな生き方を選ばずにはいられない貴方。
「だって…貴方が生まれた日でしょう」
心ゆくまで眠ってください、エルヴィン団長。
貴方が不安にならないよう、私がこうして抱いていますから。
いつまでも、いつまでも…
そしていつか本当の安らぎが訪れますようにと願いながら、エルヴィンの唇にキスを落とす。
「ああ…」
エルヴィンは再び瞳を閉じ、柔らかく微笑んだ。
「ここは地獄でも…天国でも…現実でもないな…」
10月14日。
胎内を出て、初めて母親に抱かれた日。
「ここは…楽園だ───」
母親と同じ温もりを与えてくれる、愛する女性。
その腕に抱かれながら、エルヴィンは安らかな眠りに落ちていった。
開け放した窓から吹き込む風で、白いカーテンが揺れる。
感情を内に秘め、静かにエルヴィンを抱く女兵士。
限りない愛情に包まれたその部屋は、まさしく“楽園”だった───
Fin.
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日記へのコメント
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