作者プロフィール
日記
エルヴィン夢『ピエタ』 団長生誕祭2016

今日はエルヴィン・スミス団長の誕生日。

リヴァイ夢を書いていた私ですが、「進撃の巨人」で最初にハマったのは団長でした。

本当はちゃんとお祝いしてあげたかったのですが、書き殴りショートストーリーで、こっそりとお祝いさせてください。

誰よりも少年の心を持っている団長。
お誕生日、おめでとう。





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『ピエタ』



開け放した窓から吹き込む風で、白いカーテンが揺れる。

日当たりの良い一室で、エルヴィンはゆらゆらと水に漂うように横たわっていた。

穏やかで、静かで、温かくて。
まるで胎内のように安らかだ。

最後に睡眠をとったのはいつだっただろう。
そう思えるほど激務に追われる日々。

自分の夢を追いかけ、
そのために多くの部下と仲間を殺し、
飽き足らずに有望な新兵達を勧誘しては、
自分の夢のために彼らを殺す。

その繰り返し、繰り返し。


ふと目を覚ましたエルヴィンは、掠れた声で呟いた。


「・・・私は死んだのか?」


身体はどこも痛くないのに、力が入らない。

否。
力を入れることを忘れるほどの心地よさに、いつまでも身をゆだねていたかった。

ゆっくりと目を開ければ、柔らかな光。
それを背にしながら一人の女性が、顔を覗き込んでくる。

眠るエルヴィンを膝に抱えていたのは、彼がこの世界で最も美しいと思う人。


「貴方には、ここが死後の世界に見えるのですか?」


死後の世界…?

視界の端に映る景色は、調査兵団の団長室だ。
膨大な書類、作戦企画紙、地図、立体機動装置、そして死亡者名簿。

エルヴィンは微睡ながら口元に笑みを浮かべた。


「私が死んだら行き着く先は地獄と決まっている」


左手を伸ばし、滑らかな彼女の頬に触れる。


「だが、君のように美しい人が地獄にいるわけがない」


それはあまりに幸せすぎる。


「かといって、君のように美しい人が住まう天国に行けるはずもない…」


それはあまりに残酷すぎる。


「だから、私はまだ生きているということになるな」


エルヴィンの身体を包み込む手。
彼を抱く女兵士は悲哀を漂わせていた。


「団長…今日だけはどうか、自分を許してあげてください」


死ぬ方がずっと楽。
そんな生き方を選ばずにはいられない貴方。


「だって…貴方が生まれた日でしょう」


心ゆくまで眠ってください、エルヴィン団長。
貴方が不安にならないよう、私がこうして抱いていますから。

いつまでも、いつまでも…


そしていつか本当の安らぎが訪れますようにと願いながら、エルヴィンの唇にキスを落とす。


「ああ…」


エルヴィンは再び瞳を閉じ、柔らかく微笑んだ。


「ここは地獄でも…天国でも…現実でもないな…」


10月14日。
胎内を出て、初めて母親に抱かれた日。


「ここは…楽園だ───」


母親と同じ温もりを与えてくれる、愛する女性。
その腕に抱かれながら、エルヴィンは安らかな眠りに落ちていった。



開け放した窓から吹き込む風で、白いカーテンが揺れる。


感情を内に秘め、静かにエルヴィンを抱く女兵士。


限りない愛情に包まれたその部屋は、まさしく“楽園”だった───



Fin.






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[関連ジャンル] 二次元  [作成日] 2016-10-14 18:55:17

日記へのコメント




軽い気持ちで読んでしまった自分ながら予期せぬ涙が…💦
「胎内」というテーマというか、キーワードがとても心を打ちました。


相変わらずの文章の透明感。
これが殴り書きだとは信じられないし、信じたくないです 笑

進撃の巨人という作品の世界観の中で、あまりにも美しい一瞬に、またまみえることが出来ました。


私も負けてられないや。
そんな強がりを言いたくなる今日この頃です。




「胎内で深く眠る赤児の如く 一人 身を横たえるために」


素敵な夢を、ありがとうございました💕
[投稿者]伽藍さん [投稿日]2016-10-20 22:37:58

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