第7章 Secret Circus
坊っちゃんのお部屋へ戻り私達はそれぞれ動き始めた。
こまめに坊っちゃんの汗を拭き取ったり時間をおきながら熱を測ったりとしている間、ソーマ様は坊っちゃんの為にとミーナさんの似顔絵を描いたように彼等が信仰しているシヴァ伸の絵を描いていた。
…まあ、絵の上手さはどうこう言いませんが。
そんな中息を荒くも眠っている坊っちゃんを見つめていると思う。
生まれつきお体が弱かった坊っちゃん。まだ旦那様達がお亡くなりになる前、あの時は確か…。
頭に浮かんだのは坊っちゃんが熱に浮かされ食欲が無くても唯一口になさっていたもの。
私は音を立てないように部屋を出て厨房に向かった。
目当ての物はすぐに見つかった。
どちらも坊っちゃんが大好きなスイーツに使われるからか分かりやすい場所に保管してあった。
あとはこれを坊っちゃんがお目覚めになる頃にお出しすれば…。
「ネイラ殿?」
背後から声をかけられ驚き手にしていたものを落としてしまいそうになったがそれを堪えた。
「す、すいません…!そんなに驚きになるとは!」
「いえ、此方が勝手に驚いただけですから。それでアグニさんは何故ここに?」
「ソーマ様にお食事でもと思いまして」
もうそんな時間になっていたかと懐中時計で時間を確認すると、もう夜になっていた。
「それなら私もお手伝いします」
「はい、ありがとうございます!」
手にしていた物をあった場所に戻しアグニさんの手伝いに回った。
ソーマ様含め私達は軽く休憩を挟みながら坊っちゃんの看病をした。
「…熱は下がったようですね」
私は体温計で坊っちゃんの体温を測りそこに表示された数値に安堵した。
「呼吸音も正常ですし顔色も昨日よりずっといい。一安心ですね」
よく眠っている坊っちゃんと慣れない看病疲れにより眠ってしまったソーマ様を気遣ってかアグニさんは小さくそう言った。
「人間にとって最高の回復薬は睡眠だといいますから。起こすのはやめておきましょう」
セバスチャンのその言葉を合図に私達は部屋を後にした。