第42章 甘い文字
手のひらに文字を書いた途端、
薄暗い館内でも分かるほどに
頬を紅潮させた凛の顔を見つめる。
文字を書いた手が、
ゆっくり握りこぶしを作るのを
目の端で確認した後、
その手を包み込むように握ると、
熱い体温が手のひらから伝わった。
……平仮名を勉強しておいて良かった。
まさかこんな場面で
平仮名を活躍させるとは思っていなかったが、
凛の恥ずかしそうな表情は、
鼓動を心地よく高鳴らせた。
すぐに視線をスクリーンに戻した
凛を見入っていると、
『……あっち。』
と、凛に口と手の動きだけで
スクリーンを見る様に促される。