第14章 母親の声が
その話は盛り上がり、遂には政宗と義姫は二人で言い合いを始めてしまった。
唖然としていると後ろから小十郎が近づいてきて外へ連れ出してくれた。目の前で繰り広げられていたあそこからどうにかして逃げたいと思っていたのでちょうどよかったと小十郎にお礼を言った。
「すまねぇな、政宗様と義姫様はなんでかいつも顔を合わせるとあぁなるんだ」
「いや…というか、意外でした」
「は?なんでだ」
は政宗が病で失った、失わざるを得なかった右目の話をした。
小十郎は気まずそうな顔をしていたが、はどうしても気になったので勝手に話を続ける。
それが原因で仲が悪くなった話を未来で聞いたことがあるとか、毒殺されそうになったとか、そんな話をしていると小十郎は首を傾げた。
「そんな話は聞いたことねぇな」
「違うんですか?」
「あぁ、寧ろ政宗様を大事になさっていた」
これも違いなのだろう。
「大事に、ですか?」
「確かに政宗様は己の右眼を忌嫌っていた。士気が下がっていたことも事実だ」
「でも義姫様は嫌ったりしてなかったんですか」
「これは特別なものだ、これでこそ梵天丸だと笑顔を絶やさなかった」
幼少政宗、梵天丸は確かに右目を失い、小十郎が抉りだしたのだという。
だがその時もそうだし、病気になったときも義姫は決してそばを離れることはなかったという。
士気が下がってしまったときは義姫が喝を入れ、気合を出させていたとか。
「…よかった、私変な心配してたんですね」
「今は違う心配をしろよ。お前義姫様に相当気にいられている。下手したら連れていかれるぞ?」
はそうですねぇ、と幸せそうに笑ってごまかした。