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死のゲーム

第6章 不思議な本


私は、昨日浩ちゃんに呼び出された。だから、部活を終えて職員室までやって来た。でも、職員室の扉を開けるのが怖かった。転校初日とは違う、緊張感があった。3回扉をノックしてから開ける。
「失礼します。中村先生はいらっしゃいますか?」
見ると、職員室の中は浩ちゃんしか居なかった。少し安心する。
「おう 。じゃ、行くか。」
「え?どこに?」
今日は私、呼び出されたんじゃないの?どこか行くところがあるなら最初から言っといてほしかった。それから、浩ちゃんと歩きながら、校舎を出た。真剣な表情をした浩ちゃんに話しかけるのが怖くて、私はずっと黙ってた。歩き続けてると、ある場所に着いた。お母さんのお墓がある墓地。夕暮れの空に見舞われて、鮮やかな色をしていて、お墓には見えない、まるできれいな写真を見ているような気持ちになった。
「まだ、俺が道場にいた頃、おばさんが、口癖のように言ってた。『花が大きくなったらよろしくね』って。その言葉の必要性がそのときはわからなかった。だけど、おばさんが死んで、葬儀の列に並んだとき、確かに聞いたんだ、『花をよろしくね、見守ってね』って。それで、あのとき聞いた言葉の必要性を知った。きっとおばさんは自分に長い命がないことをわかってた。だから、俺にあんなことを頼んだ。俺はそう、思ってる。任された以上、花を最後まで見守る。それをおばさんにいいに来た。勝手だけど、花にも話しておきたかったから、来てもらった。」
なんで、浩ちゃんが、私に何も言ってこなかったのか、そのときわかった。私に変に気を遣わせない為にそうしたんだと思う。浩ちゃんなりの気遣い。そうしたら、重なりすぎていた偶然の説明もつく。母さんは最期の最後まで、私を思っていてくれた。浩ちゃんに託してまで、私の面倒を見てくれた。母さんの心遣いが嬉しすぎて、涙が溢れて止まらなかった。浩ちゃんは、そんな私を慰めようとはしなかったけど、今はその対応が嬉しかった。今、慰めてもらったら、私は一生弱いままで生きてしまう。浩ちゃんと母さんに心の底から感謝した。
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