第1章 プロローグ〜始まりはいつもここから〜
吹き抜ける風が彩りを添える初夏、ルリーは王宮への道を急いでいた。
「急がなくちゃ…っ!」
今日は庶民である私が一生に一度、王宮に入ることが許される日。
そう、国中の女の子が夢見る『プリンセス』になれる日……
私は走りながら数日前のやり取りをおもいだした。
「先生、白い花のお話って知ってる?」
「持人の、願い事が叶うって言い伝えの?」
教え子は、こくりと頷いた。
話を詳しく聞くと、この子のお母さんは重い病に侵されていて、なかなか治らないのだという。
そんな母親にせめて願いを込めた白い花を贈りたいという健気な教え子の願いを断る事なんて、私には出来るわけがなかった。